企業情報
会社名
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株式会社フジテレビジョン
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設立
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平成20年10月1日(新設分割による)
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所在地
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〒137-8088 東京都港区台場二丁目4番8号
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事業内容
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テレビジョン放送事業など |
お二人にお話を伺いました!
左:技術局 回線・送信技術部 主任 河井 宏允様
右:技術局 制作技術統括部 映像班 関口 貴久様
これまでの運用体系と課題点
これまで4年毎に開催される大規模国際スポーツイベントでは、開催現地に拠点を設けていました。カメラやスタジオ機材を設営し、サブコントロールとしてスイッチャー(SW)、ミキサー(MIX)、ビデオエンジニア(VE)も現地に拠点を設けて中継運用をしていました。
開催地によっては、スタジオ拠点とサブコントロール拠点が物理的に離れてしまうケースもあり、その場合は現地ネットワーク会社に帯域保証の専用回線を依頼し、拠点間を結んでいました。
サブコントロールで制作した映像/音声は、専用回線を経由してお台場にあるフジテレビジョン本社へと送っていました。
大規模国際スポーツイベントでのクラウドライブ制作での運用体系
昨今、リモートプロダクションが一つのキーワードとして、放送業界でもクラウド・IPを使用した中継運用方法が模索されています。
フジテレビジョン様でも、高額な専用回線コスト・機材の配送コスト・人件費を削減するという観点で、ソニー様のソフトウェアスイッチャー『M2L-X(検証版)』を使ったPoCを行うこととなりました。
今回のPoCの構想図
クラウドライブ制作への挑戦
クラウドライブ制作のPoCを実施する目的は、下記が挙げられます。
- クラウド環境でのプログラム制作が技術的に可能か確かめること
- クラウド制作で出来ること、出来ないことを確認すること
また、クラウド制作でかなうメリットを実際に検証する必要がありました。
想定されるクラウドライブ制作でかなうメリット
期日通りに回線が引かれていなかったり、
機材が届かなかったり・・・
クラウドライブ制作の構成
今回のクラウドライブ制作では、AWSのクラウド上にソニー様のソフトウェアスイッチャー M2L-X、ソフトウェアオーディオミキサー、バーチャル合成ソフトウェア、IPマルチビューワー等をデプロイし、クラウド制作環境を整えました。
現地スタジオからクラウドを繋ぐプロトコルはSRTをベースに構成を組みました。
今回、フランス・パリの2拠点⇔クラウド間をSRTプロトコルを使って運用されていましたが、
SRTプロトコルを使用した理由はなんですか?
SRTを使用した理由としては、M2L-XがSRTをサポートしていたことが大きいですが、一般公衆インターネット回線を使うなら、SRTかなと思っています。弊社でも、SRTを使った海外からの映像の送受信は数多く実績がありましたし、ソニー様でもMakitoを使って検証しており、安心感がありました。
ちなみに、今回のPoCでは、SRT、NDI、WebRTCプロトコルを使用しています。SRTはオンプレ⇔クラウド間の通信。NDIは、クラウドのVPC内での信号のやり取り。WebRTCは、それぞれのインスタンスのWebGUIを見るために使用しました。
SRT対応のコーデック製品の中でも、今回 Haivision 社の Makito X4 を採用していただきましたが、その決め手はなんでしたか?
Haivision の Makito X4 は、弊社でも所有していて、海外からの映像受信でもよく使用しています。
他のSRTコーデック製品もいくつか試しましたが、Makito X4 が一番安定しているように思いました。
SRTによりフォーカスをあててご質問します。
どのような使用方法となりましたか?
Makito X4は、フランス・パリの拠点AとBの2か所のスタジオから、AWSのロンドンリージョン*に立てたインスタンスにSRTを打ち上げました。
この2拠点からクラウドまでは、一般公衆インターネットのみを使用しました。
また、ロンドンリージョンのVPCと、弊社の別用途で使用していたAWSのDirect Connectを接続して、フジテレビジョン本社までSRTで落としました。
*M2L-Xの推奨されるEC2インスタンスタイプの関係で、今回はパリではなくロンドンにインスタンスを立てました。
Makitoは、どのような構成で運用されたのでしょうか?
2台のMakito X4からそれぞれ5ストリームを投げました。
5つのうち3ストリームは、M2L-Xへ上げる18M bpsの高レート映像を出しています。残りの2ストリームは、マルチビューワー用に2Mbpsの低レート映像を出しました。一般公衆網回線を使った運用だったため、ネットワークがひっ迫しないようにマルチビューワー用のストリームは低レートに設定しました。
ビデオ設定は、1080 50pで出力しました。ソース映像はInterlaceでしたが、MakitoでProgressiveに変換しました。変換がきれいに出来ていて良かったです。
レイテンシーに対しても挑戦があったかと思いますが、いかがでしょうか?
はい!クラウド制作において遅延量は非常に重要な要素となってきます。なんとか遅延を減らしたいと思い、構成等も練りました。
最終的な遅延時間ですが、下記の通りです。
パリ拠点からクラウドに対しての打ち上げですが、RTTが一桁だったので実際はもう少し攻められることができたかもしれません。(現地入りしてからは、バタバタしていて、追い込めず...)
M2L-XからはWebRTCを使い下ろしてきましたが、遅延は500smec程度であったため、違和感なくスイッチングすることができました。
パリから東京のフジテレビジョン本社までに実際にどの程度かかったというと、1100msec程度となりました。
確かに、RTT値の4倍の値をLatency値として設定することを推奨しています。もしかすると、現地側はもう少し短く設定できたかもしれませんね。
今回のPoCを通しての成果や気づきはどうですか?
今回のPoCで確認したかったこととしては、2点あります。
① クラウド環境でリモートプロダクションが技術的に可能かどうか こちらの回答としては、技術的には出来たけど、まだ満足ではない!
それぞれのアプリの改善点も出てきたので、バージョンアップに期待したいところやもう少し詰められる部分があると思います。
② 中継のワークフローでコストカットにつなげることができるか ★ 現地からの回線は公衆インターネットさえあれば制作可能
★ クラウド制作が活用できる現場はまだ限られるが、用途次第では活躍!
★ オンプレ機材を減らすことで、現場スタッフの負担減へ
公衆インターネット回線での運用に関しては、自信が持てる結果になったと思います。安価に手配が可能なので、クラウド制作においてはメリットです。
ただ、このシステムをどの現場でも使えるかというと、まだ検証が必要な場面が多いところもあるかなと思います。
オンプレ機材を減らすことで、現場セッティングは非常に楽でしたし、輸送コストの削減にもつながりました。この点においては現場スタッフの負担が大きく軽減できると期待しています。
今後の課題としては、下記のようなことが挙げられると思います。
- クラウド環境の予備系の構築方法
- クラウド環境構築セットアップまでの期間の短縮
- モバイル中継機器との連携
引き続き、冬季のスポーツイベントでの実用化へ向けて検証をしたいなと思っています!
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Makito X4
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PoC作業風景(パリ側)
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PoC作業風景(東京本社側)
番外編:ワールドシリーズでのSRT運用
今回のスポーツ大会でのPoCは、社内的にもSRTの活用実績を広める上での大きなきっかけとなっています。
実は、2024年に開催された米国ワールドシリーズ(メジャーリーグベースボール(MLB)における優勝決定戦)でも、本線でSRTを使用したんですよ!
うれしいです!
御社では、さまざまな国際スポーツ大会でSRTを利用した映像受信を手掛けていただいておりましたが、
今回のPoCでより加速した形になりましたね!
ワールドシリーズの話も聞かせてください。
ワールドシリーズの回線では紆余曲折あり、第四試合からSRTを中継本線として使用しました。現場に持ち込んだ弊社のMakito X4 からのSRTを、本社側のMakito X4 で受信しました。
現地スタジアム側のインターネット環境がどれくらい安定しているかなど、現地に行ってみないとわからない不安要素はありましたが、結果的に、問題なく使用することができました。SRTにより他経路よりも低遅延で伝送することができたため、本社⇔現地間の掛け合いもスムーズに行うことができました。
SRTの安定性をさらに上げるため、クラウドを経由させるなどの工夫も功を奏して、本番では映像も落ちる事なく、安全に運用することができました。
大きなスポーツ大会では、特に緊張感がある伝送になるかと思いますが、
無事に安定伝送ができうれしいです。
ちなみに、今後Makitoに期待することはありますか?
今回のPoCや、ワールドシリーズのSRT運用で、SRT伝送の実用性について実績や社内における評価も高まっているように感じます。
本線運用をするとなると電源2重化の機能があればよいなと思います。
ただ、Makitoはポータブルな小型筐体がメリットでもあるので、難しいところでもありますね。
今後、SRTをどのように運用されていきたいか、展望を教えてください。
今後の展望としては、次の冬季スポーツ大会や他の海外中継でも実績を積んでいきたいと思っています。
ただ、SRTは現地のインターネット環境に依存することが多いので、その点は考慮していく必要があるかなと思っています。
ありがとうございました。
今後も、御社のよりよい放送環境構築をサポートさせていただきます。
公衆インターネット回線を使用したクラウドライブ制作のPoCを、Makito X4コーデック機器で行った事例をご紹介いたしました。
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