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検証レポート

モバイルトランスミッターPro460でStarlinkを2台使って
映像を飛ばしてみた

今回の記事は「モバイルトランスミッターHaivision Pro380を使ってStarlink(衛星回線)で映像を飛ばしてみた①」に関連する内容となっております。Starlinkを使った検証としては、第3弾になります。

前回公開した「Haivision Pro380~①」では、モバイルトランスミッター Pro380とStarlink(衛星回線)を1台使った検証を行いました。

今回は、「もっとビットレートを増やした配信がしたい場合の上限値が知りたい」と思い、Starlinkを2台使用した検証を実施する運びとなりました。
Starlinkを2台にすることで、ビットレート6M, 12M, 18Mのビデオ素材を、どのくらいのレイテンシをもたせれば安定した伝送が行えるかも検証いたしました。


内容

  1. 検証概要
  2. 検証結果と考察
    1.  ・検証1:Starlink回線のみ(SIM無し)
    2.  ・検証2:Starlink 2台 + SIMカード6枚併用

検証概要

実施日​ 2025年4月17日(木)
時間​ 午後1時~午後5時
場所​ レスタービルディング屋上(東京都港南区)
天気​ 晴れのち曇り

検証に使用した機材

Starlink

Starlink

SpaceXによって提供されている衛星インターネットサービス。地球低軌道に多数の小型衛星を配備することで、高速で広い地域にわたるインターネット接続を提供している。

StreamHub

​Haivision  StreamHub

受信・再配信システムサーバ
レシーバープラットフォーム

Pro460

Haivision Pro460

H.265/HEVCハードウェア搭載​
モバイルトランスミッター​

モバイルSIMボンディング技術(SST)で
安定した映像伝送を実現

Pro460のご紹介

Proシリーズ詳細へ


5G回線が利用できるPro460での検証を行いました。しかし当日の弊社屋上の通信環境が悪く、5G回線が安定しなかったため、4G回線での検証を行いました。

前回の検証ではPro380というモデルを使用しましたが、今回はPro460を使った検証を行います。Pro460は、SIMカードを最大6枚まで挿すことができ、尚且つ5G回線が利用できます。12G-SDIポートを備え、4Kソース映像も伝送することが可能です。SDI入力ポートは4つあり、最大4 x Full HD4映像を同時伝送することが可能です。また、ウルトラローレイテンシモードで、最短80msecでの伝送実績があります。

入力
1 x 2060p 60/59.94/50/30/29.97/25
4 x 1080p 60/59.94/50/30/29.97/25
1080i 60/59.94/50
720p60/59.94/50
エンコーディング H.264, HEVC
回線 4G, 5G
ビットレート 2 Mbps to 80 Mbps (4K)
300 kbps to 20Mbps (HD)
SIM数 6
プロトコル SST, SRT(有線)
遅延
SSTモード
CBR 500msec to 10sec
VBR 800 msec to 10sec
Low latencyモード
CBR 80msec to 500msec
VBR 非対応

構成

構成図
設置状況

Starlink公式ガイドラインによると、同一拠点に複数のStarlink端末を設置する場合は、各アンテナのマウント中心間を最低でも3メートル離す必要があるとされているため、写真のように4m程度離した状態で設置をしました。
今回の検証では、以下のビデオフォーマットに対してビットレートを6M, 12M, 18Mの3パターンに設定し、約30分間の映像伝送を行い、その際のDropped Packets の数をカウントします。

動画フォーマット:

HEVC / H.265
1920 x 1080i 59.94
CBR
4:2:0 8bit

 

 

Starlinkの速度

Starlink1​

Starlink1

​Starlink2

Starlink2

インターネット接続のダウンロード速度は比較的良好ですが、アップロード速度は遅い状況です。これは衛星通信を利用するStarlinkの特性によるものです。
※計測するタイミングによって速度にばらつきが生じることがあります。


検証結果

検証1:Starlink回線のみ(SIM無し)

検証①では、Pro460に載せているモバイルSIMは使用せずに、Starlinkを2台使用し実施ビットレートを6M, 12M, 18Mの3種類に設定し、5分毎に発生したDropped packetの数をカウントしていきました。

構成

検証1の構成

 

<ビットレート6Mの場合>

Bitrate 6000
Latency(ms) 500
経過時間 5分後 10分後 15分後 20分後 25分後 30分後
Dropped Packets 818  1585  2233  3102  3576  4194
Bitrate 6000
Latency(ms) 10000
経過時間 5分後 10分後 15分後 20分後 25分後 30分後
Dropped Packets 88  228 340 388 467 489

 

<ビットレート12Mの場合>

Bitrate 12000
Latency(ms) 10000
経過時間 5分後 10分後 15分後 20分後 25分後 30分後
Dropped Packets 3789 5217 6644 6701 6790 7342
StreamHub統計情報
12M 10000msecに設定した際の測定開始から15分後のStream HUBの統計情報​

検証1の考察

Starlinkを2台だけ使った場合、ビットレートが6Mでレイテンシーが500msだと映像はほぼ映りませんでした。​
そのため、レイテンシーを10000ms(10秒)にしてみましたが、ブロックノイズのような映像の乱れが定期的に出続ける結果となりました。
ビットレートを12Mにして、レイテンシーを10000msにしましたが、こちらはDropped packetsがより多く出続ける結果となり、映像はずっと乱れた状態でまともに映ることはありませんでした。
そのため、ビットレートを18Mにする検証は断念しました。

Starlinkの性質上、安定した通信の継続は難しいことから、Starlinkだけでの高ビットレートの映像伝送は困難かと思われます。

検証2:Starlink 2台 + SIMカード6枚併用

検証②ではStarlink 2台とPro460に載せているSIMカード6枚を組み合わせた検証を行いました。
Pro460にはSIMカードを最大6枚まで挿入可能なため、今回の検証ではdocomo, KDDI, Softbankの通信キャリアからそれぞれから2枚ずつ、合計6枚のSIMカードを使用しました。
ビットレート6M/レイテンシ800msecの検証からスタートし、12Mと18Mで安定伝送にはどの程度のレイテンシが必要か確認を行っていきました。
また、Pro460では5G通信にも対応していますが、弊社周辺の環境では5G接続が不安定であるため、今回の検証は4G通信のみで実施しました。

構成

検証2の構成
ネットワークパフォーマンス情報 : ETH=Starlinkと各SIMが、どれくらいの帯域をもっているか1秒毎に確認することが可能です。

 

<ビットレート6Mの場合>

<ケース1>
Bitrate 6000
Latency(ms) 800
経過時間 5分後 10分後 15分後 20分後 25分後 30分後
Dropped Packets 11  11 20 20 24
 

 

<ビットレート12Mの場合>

<ケース2>
Bitrate 12000
Latency(ms) 1000
経過時間 5分後 10分後 15分後 20分後 25分後 30分後
Dropped Packets 0 0 0 12
<ケース3>
Bitrate 12000
Latency(ms) 3000
経過時間 5分後 10分後 15分後 20分後 25分後 30分後
Dropped Packets 0 0 0 0

 

<ビットレート18Mの場合>

<ケース4>
Bitrate 18000
Latency(ms) 1000
経過時間 5分後 10分後 15分後 20分後 25分後 30分後
Dropped Packets 561  1230  1517 2248 2639 2813
<ケース5>
Bitrate 18000
Latency(ms) 5000
経過時間 5分後 10分後 15分後 20分後 25分後 30分後
Dropped Packets

 

<検証結果まとめ>

  ケース1 ケース2 ケース3 ケース4 ケース5
ビットレート(kbps) 6000  12000 12000 18000 18000
レイテンシ(ms) 800 1000 3000 1000 5000
Dropped Packet 発生 発生 発生せず 発生 発生せず

検証2の考察

ビットレートが6Mでもレイテンシーが800msではDropped Packetsが発生しました。
ビットレートが18Mでも、レイテンシーを5000msに設定したところ、Dropped packetsは発生しませんでした。

レイテンシー設定については通信環境によって最適値が変動するため、実際の通信帯域、回線の安定性などの状況を確認した上で、適切な値を設定する必要があるということが分かりました。

前回のPro380とStarlink1台と比較して、高ビットレートでの伝送であれば、Starlinkを2台使用した方が安定した伝送が行えることが分かりました。


今回は4G回線での検証でしたが、5G回線の通信が安定して使用できるようになりましたら、改めて5G回線で検証してみたいと思います。


検証は以上です。

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