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はじめに
近年、大規模な自然災害が頻発し、私たちの社会インフラに深刻な影響を与えています。特に、通信インフラは、被災地の情報収集、救助活動の連携、住民の安否確認など、災害対応において極めて重要な役割を果たします。しかし、地震や津波、土砂崩れなどの災害発生時には、既存の通信インフラが寸断され、通信が困難になる事例が後を絶ちません。
本コンテンツでは、企業や自治体のインフラ担当者の皆様に向けて、災害発生時における確実な音声通信手段の確保という喫緊の課題に対し、sXGP基地局と 衛星通信(Starlink)を組み合わせた自営音声通信ネットワーク構築のメリットとその活用方法について解説します。
災害時における音声通話の必要性と既存インフラの脆弱性
災害発生時、音声通話は以下のような目的で不可欠となります。
しかし、令和6年能登半島地震では、固定電話で最大7,860回線、固定インターネットで約1,500回線が利用できなくなるなどのサービス障害が発生しました。復旧には時間を要し、一部地域では5月末になっても復旧が進んでいない状況でした。(引用元:令和6年版_情報通信白書__第Ⅰ部_第2 節 通信、放送、郵便等の状況)。
携帯電話についても、最大で839の基地局で停波が報告されました(1月3日時点)。その原因の多くは、停電の長期化や土砂崩れによる伝送路の断絶でした。
また、東日本大震災においても、地震や津波により通信ビル内の設備損壊・水没・流失、ケーブルの断裂・損壊、基地局の倒壊・流失など、甚大な被害が発生しました。
このように、既存の通信インフラは災害に対して脆弱であり、完全に復旧するまでには相当な時間を要する可能性があります。その間、音声通信手段が途絶えることは、人命に関わる重大な問題を引き起こしかねません。
以上のような背景を踏まえ、PALTEKでは、災害に強く、迅速な復旧が可能な通信ネットワークとして、sXGP基地局と 衛星通信(Starlink) を組み合わせた自営音声通信ネットワーク(プライベートLTE)構築をご提案いたします。
sXGP基地局+Starlinkによる自営音声通信ネットワーク構築のメリット
1- 迅速な導入と利用開始
- 免許不要
- sXGP(shared eXtended Global Platform)は「自営通信」の一つであり、無線局の免許申請が不要で、基地局の設置場所を 届け出るだけで利用できます。これにより、災害発生後、迅速に基地局を設置してネットワークを構築することが可能です。
- 既存のスマートフォン利用:
- 一般的な Band 39 に対応したスマートフォン(Android, iPhone の一部)がそのまま利用可能なため、専用端末の準備や配布の手間とコストを削減できます。VoLTE 対応端末であれば、特別なアプリなしで通話・SMSが利用可能です。
- オールインワン基地局:
- Ubiik 社の freeRAN®のような sXGP 基地局は、内部に EPC(Evolved Packet Core)を内蔵した一体型であるため、単独での自営網運用であれば電源接続ですぐに使用できます(LAN 接続は設定変更やインターネット接続時に必要)。
2- 通信の安定性と信頼性
- 干渉の少ない周波数帯
- sXGPは、既存の携帯電話システムとは異なる 1.9GHz帯(LTEのB39) を利用しているため、電波干渉が少なく、安定した通信が可能です。
- 衛星通信によるバックホール:
- 地上回線が寸断された場合でも、衛星通信(Starlink)をバックホール回線として利用することで、通信インフラが不十分な不感地帯や災害現場でも音声通信ネットワークを構築できます。
- 高い防塵防水性能:
- Ubiik社のfreeRAN®はIP67準拠の防塵防水性能を有しており、屋外の過酷な環境下でも安定した動作が可能です。
3- コスト効率
- 免許関連コストの削減
- 無線局免許が不要なため、免許取得や維持にかかるコストを削減できます。
- 専用端末不要:
- 既存のスマートフォンを活用できるため、専用端末の導入コストを抑えられます。
4- セキュリティ
- SIM認証
- sXGPはSIM認証によるセキュアな自営無線通信ネットワークの構築が可能です
5- 柔軟なネットワーク構成
- 外部EPC対応
- 複数の基地局を運用する場合は、外部にEPCを設置することも可能です。
- 既存ネットワークとの接続: :
- EthernetポートやキャリアLTE回線をバックホールとして利用できるため、sXGPによる自営網を他のネット ワーク(インターネット等)と接続することも可能です。
システムの仕組み
sXGP+Starlinkによる自営音声通信ネットワークは、主に以下の要素で構成されます。
屋外対応sXGP基地局 (Ubiik freeRAN™)
sXGP方式で無線通信を行い、スマートフォンとの間で電波を送受信します。
IP電話ゲートウェイ装置 (NTTテクノクロス Crossway®)
内線端末と電話番号を紐づけ、内蔵のIP-PBXを通じて音声通信ネットワーク網へ接続します。
衛星通信 (Starlink)
インターネット回線が利用できない場所において、バックホール回線として機能し、IP電話ゲートウェイ装置と通信します。固定IPアドレスで接続されます。
スマートフォン (Band 39対応, VoLTE対応)
sXGP基地局の電波を受信し、IP電話ゲートウェイを介して音声通話を行います。フリー音声通話アプリ(Linphoneなど)を利用する場合もあります。
端末 / 通話アプリ
フリー音声通話アプリ「Linphone」 (各スマートフォンにインストール)
sXGP自営音声通信ネットワークの平時利用
sXGP自営音声通信ネットワークは、災害時だけでなく、平時においても通信インフラが届きにくい場所での通信手段や、業務効率化のためのツールとして活用できます。
例えば、山間部や地下施設での作業連絡、工場や倉庫内での連携などに利用できます。 平時からこれらの用途で利用していれば、災害発生時にも特別な準備をすることなく、既存のシステムをそのまま緊急連絡網として活用できます。
- 既存のスマートフォンが利用可能
- sXGPは、一般的なBand 39に対応したスマートフォン(Android、iPhoneの一部機種)で利用できるため、災害発生時に専用の端末を用意する必要がありません。 平時においても従業員や関係者が自身のスマートフォンを利用していれば、非常時にも追加のトレーニングなしにネットワークを使用できます。
- 免許不要で設置場所を届け出るだけで利用可能:
- sXGPは「自営通信」の一つであり、無線局免許が不要で、基地局の設置場所を届け出るだけで利用できます。この簡便さは、平時における導入のハードルを下げるとともに、災害時においても迅速なネットワーク構築を可能にするため、平時から利用している拠点のネットワークを速やかに非常用として活用できます。
- 可搬性に優れた屋外対応基地局
- Ubiik社製のsXGP基地局「freeRAN®」はIP67の防水防塵性能を有しており、屋外設置が可能です。 また、可搬性に優れているため、平時は特定の場所に設置し、災害時には必要に応じて別の場所へ移動して再設置することも容易です。これにより、状況の変化に合わせて柔軟にネットワークを運用できます。
- 独立したネットワーク構築
- sXGP自営音声通信ネットワークは、既存の通信インフラに依存しない独立したネットワークを構築できるため、公共通信網が途絶した場合でも、自営ネットワークは影響を受けずに利用を継続できる可能性が高いです。平時からこの独立したネットワークを運用しておくことで、非常時においても安定した通信手段を確保できます。
このように、sXGP自営音声通信ネットワークは、平時からの利用を前提とすることで、特別な準備や追加投資を抑えつつ、災害発生時にも迅速かつスムーズに非常用通信手段へと移行できるという大きなメリットがあります。
まとめ
災害発生時における通信インフラの途絶は、企業や自治体の事業継続、そして人命に関わる深刻な課題です。sXGP基地局と 衛星通信(Starlink) を組み合わせた自営音声通信ネットワークは、免許不要で迅速な導入が可能であり、既存のスマートフォンを活用できるためコスト効率にも優れています。また、安定した通信品質と高い信頼性を備え、災害時においても確実な音声通信手段を提供します。
平時においても通信不感地帯の解消や業務効率の向上に貢献するこのシステムは、災害対策を強化し、安全・安心な社会の実現に貢献する有効なソリューションです。
PALTEKでは、sXGP自営音声通信ネットワーク構築のサポートをしています。ご興味をお持ちのインフラ担当者の皆様は、ぜひ一度お問い合わせください。