エッジAIとは ~クラウドAIとの違いから、メリット、活用事例まで~
私たちの身の回りにあるスマートフォンやカメラ、車などの端末にAIが搭載されているものが出てきており、実は少しずつ身近なものとなってきているエッジAI。
「AI」といっても機械学習やディープラーニング ( Deep Learning ) などさまざまな概念がありますが、ここではディープラーニングベースのエッジAIについてその概要について説明し、クラウドAIとの違いやエッジAIのメリットや事例をまとめました。
目次
1.エッジAIとは
1-1.エッジAIとは
「AI」は知っているけど、「エッジ」って何?という方もいらっしゃるかもしません。
エッジとは、その名のとおり「端」という意味になります。何らかのシステムや構造の端のことです。あるシステム系の中の端っこにある機器(端末)です。先ほど述べたスマートフォンやカメラ、クルマなどもエッジ機器ということができ、このエッジ機器に搭載しているAIをエッジAIといいます。
エッジAIには、エッジ側で学習から推論まで処理を行うタイプと、エッジ側で推論処理のみを行うタイプがあります。
1-2.クラウドAIとの違い
一方クラウドAIとは、エッジ側ではデータ収集のみを行い、エッジ端末から送られてきたデータをクラウド上に搭載されたAIで学習、推論処理を行うことです。
クラウドでは高性能のGPUやCPUを用意し、エッジから送られてくる大量のデータを高速処理し、学習・推論しエッジ端末にデータを送ります。
GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple 、Microsoftの5社)のサービスをはじめ、現在一般的にAIと呼ばれるものの多くはクラウドAIのことを指しています。
1-3.エッジAIが注目される理由
では、なぜ今エッジAIが注目されているのでしょうか。 2025年、全世界で発生するデータの量は163ゼッタバイトにまで増えると試算されています。また2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークが浸透するなど、今後データ容量は更に増えることでしょう。このような膨大なデータがあふれる時代において、端末側にAIを搭載するメリットは3つあります。
リアルタイム性
AI処理において重視されているのがリアルタイム性です。
クラウドAIの場合、エッジ側から送られたデータを処理し、再度エッジ側に送信するため時間がかかりますが、エッジAIではエッジ側で処理が完結するためリアルタイムに判断することが可能です。
今後5Gが普及し、大量のIoT機器がネットワークに接続されるようになったとき、膨大なデータがクラウドに送られるようになるでしょう。そのような場合、クラウドAIにすべての処理をさせるよりも、現場に近いエッジ端末に組み込まれたエッジAIで処理する方が、よりリアルタイムに処理することができます。
コストの削減
エッジ側で処理・選別されたデータをクラウドに送ることで、すべてのデータを送るよりもデータ容量が縮小されるため帯域幅を節約します。
また、クラウドサービスのビジネスモデルは従量課金制のため、利用料の削減にもつながります。
セキュリティの強化
エッジ側でデータ管理を行うため、個人情報や機密情報などのデータをクラウドに送る必要がなく、不正アクセスの被害も受けにくくなります。そのため情報漏えいのリスクを低減でき、セキュリティの強化に繋がります。
2.エッジAIの市場と活用例
2-1.自動運転
自動運転のような「瞬時の判断」が求められる分野ではエッジAIは有効です。なぜなら、車両に搭載したカメラや各種センサーが、周囲の車両や歩行者、道路上の構造物などをリアルタイムで情報を取得し、その情報をもとに瞬時に判断する必要があるからです。もし遅延が大きいと重大な事故を引き起こす原因にもなります。
そこで、大量のデータを学習させるのはクラウドで行い、そのモデルをエッジ側で活用すれば、低遅延でスムーズな走行を実現できるでしょう。
2-2.ドローン
ドローンに搭載したエッジAIが、人や構造物をリアルタイムに認識し、自律的かつ安全なフライトを実現します。これにより、例えば人手不足が深刻化している農業においては、作物の育成状況を把握・分析し、状況に応じた育成手法の選択や収穫時期の予測などを可能にします。また人間の立ち入りが制限されるような危険な場所での保守・点検などでは、異常箇所を発見するだけでなく、異常箇所と判断した場所に瞬時にマーキングをするといったリアルタイム処理が可能になるため、今後ますます活用が期待されています。
2-3.監視カメラ
屋内、屋外に設置された監視カメラにAIを搭載することでカメラ(端末)での画像解析、映像解析が可能となり、交通量調査や万引きなどの怪しい行動を把握したり、駅ホームでの突発的な動きなどを捉え転落事故防止のためにアラートを発信したりするなどの対策にも繋がります。
コロナ禍の現在においては、3密を避けるための混雑検知システムとしても利用できるでしょう。
3.まとめ
富士経済グループの市場調査※によると、2018年度には約110億円見込だったエッジAIコンピューティング市場は、2030年度には664億円になると予測されています。
※富士経済グループ プレスリリース「本格的な導入が進む国内のAI(人工知能)ビジネス市場を調査」 https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=19039&view_type=1 (参照2021-1-13)
エッジAIを実現するため、各社からハードウェアプラットフォームがリリースされていますが、現在先行しているGPUベースの製品については、エッジ端末に搭載するには消費電力や長期供給といった課題があります。一方FPGAベースの製品の場合、消費電力や長期供給といった課題をクリアしていますが、FPGAの開発スキルが求められるため、スキル不足が課題になっています。
それらのFPGAベースの課題に対し、PALTEKでは受託開発やハードウェアプラットフォームなどの提案を行っていますので、ご興味のある方はぜひともご連絡ください。
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