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4Kを公衆網でSRT伝送する「映像伝送ソリューション」( 月刊ニューメディア2021年3月号掲載記事 )

4Kを公衆網でSRT伝送する「映像伝送ソリューション」( 月刊ニューメディア2021年3月号掲載記事 )

― 月刊ニューメディア2021年3月号掲載記事

日本で早期にSRTの提供を開始したPALTEKはSRTを使った新サービスである「映像伝送ソリューション」を2020年から提供開始しており好評だ。

エクスプローラのSRTエンコーダ「EHU-3410E」(写真上)とSRTデコー ダ「EHU-3410D」(写真下)

従来、放送・映像 業界では、オフィスに担当者が集まって映像の編集作業などを行っていた。それが コロナ禍によってリモートプロダクションを行う必要が出てきた。企業でも自社内や他社とのコミュニケーションをリモートワークに移行する動きを進めている。
これらのニーズに対して、「映像伝送ソリューション」はSRTとIP回線を使用した高画質・低遅延・低コストの映像伝送で応えている。(取材・文:渡辺 元・本誌編集長)

ピアツーピアで低コスト伝送海外との長距離伝送にも対応

PALTEKのSRT関連事業は、これまではSRT対応のエンコーダ/デコーダの販売が中心だったが、昨年からは放送・映像、防衛、 医療、一般企業などの分野にSRTによるHD・4K映像の伝送を最適なネットワークも含めて提供する「映像伝送ソリューション」に注力している。
「映像伝送ソリューション」は日本-海外間や国内間で、4KとHDの映像を数秒以内の低遅延で伝送できる。 送信側はSRTエンコーダ1台で、4Kを1ストリームで伝送したり、フルHDを4チャンネル同時に送れる。

「映像伝送ソリューション」の伝送方式は、用途に応じて次の3方式から選択可能だ。
第1の伝送方式は、送信側にSRTエンコーダ、受信側にSRTデコーダを設置し、ピアツーピアで1対1の伝送を行うというもの。シンプルなシステム構成で、低コストで伝送できる。SRTエンコーダはSDIやHDMIで入力された信号をH.264やHEVCで圧縮しSRTに変換して出力し、SRTデコーダがSDIやHDMIで出力する。SRTエンコーダ/デコーダにはSRTのリーディングカンパニーであるカナダHaivision社やPALTEKのグループ会社であるエクスプローラの製品を使用。Haivision社製品は4K対応の新製品「Makito X4」、エクスプローラ製品は国際的なSRTアライアンスで、SRT Ready/SRT Pluggedという接続評価済みのシステムとして登録されている「EHU-3410」だ。 回線は専用線ではなく、フレッツ光やNURO 光など1Gbps程度の一般公衆網のIPネットワークを使う。 低コストを重視した映像伝送・配信用途に最適な伝送方式だ。

ニーズの多い日本から海外への伝送について、株式会社PALTEK エンジニアリングディビジョン TS FAE 部長 井坂一喜氏は「海外側のIPネットワーク構成の詳細がわからなかったり、 伝送中に回線が検閲などで切断されるということが一部の国では問題になっていますが、 弊社が行った『映像伝送ソリューション』による日本から北京に向けての伝送試験では、パケットの再送信やバックアップ回線への切り替えなどSRTの機能によって、0.5秒の遅延量で高品質の映像を問題なく伝送できることを確認しています」と説明する。

クラウドやHaivision Hub経由の高品質・高信頼性の伝送方式も

第2の伝送方式は、SRTに対応したパブリッククラウドを経由する方式(図)。
送信側はSRTエンコーダからクラウドに伝送し、クラウドから受信側のデコーダに伝送する。このクラウドを経由する方式は、回線の瞬断などのリスクをより低減できる。クラウドはAlibaba Cloud、Microsoft Azure、AWSを利用可能。中国、米国、欧州など送信先によって最適なクラウドを選択できる。クラウドサービスの使用には定額制や従量制のコストがかかるが、映像品質や通信品質を重視した用途に適した伝送方式だ。

そして第3の伝送方式は、クラウドベースのメディアルーティングサービス「Haivision Hub( 旧名称:SRT Hub)」を使用する方式。「Haivision Hub」はMicrosoft Azureを活用したシステムで、Haivision社が提供している。「Haivision Hub」を使うことによって、Azureの強力なネットワークを介してネットワーク環境や通信品質を管理したシステム構築が可能となる。「配信を途中で中断できない場合に、信頼性・安全性を担保した伝送ができるため、リモートで対戦するeスポーツのライブ配信など、日本と海外のスタジオ間を同期させて高画質の映像を長時間配信するといった用途には、この伝送方式が最適です」(井坂氏)。

「Haivision Hub」の利用料金は、利用頻度などに応じて定額制と従量制から選んでコストを低減できる。 第2のクラウド経由方式、第3の「Haivision Hub」方式は、帯域やユーザ数が大規模な用途では、AkamaiなどのCDNを使用して伝送することもできるようになっている。

【図】 SRTを活用した「映像伝送ソリューション」(クラウド経由型)

品質・コストなどの要件に応じて各顧客に最適な構成を提案

日本国内での短距離伝送には、ピアツーピアでクラウドを経由しない第1の伝送方式がよいだろう。
日本-海外間の伝送、日本国内でも東京-北海道間や東京-沖縄間などの長距離伝送、 フレッツ光のNTT東日本とNTT西日本のサービスをまたぐような異なるキャリア間の伝送の場合には、クラウドや「Haivision Hub」を経由する第2・第3の伝送方式が適している。
第2の伝送方式はクラウドの初期設定やエンコーダ、デコーダをクラウドに接続する設定などが必要になるが、「Haivision Hub」を利用する第3の伝送方式は、導入時の設定が簡単というメリットもある。「弊社はお客様のニーズや通信品質の重要性、コストといったものを総合的に鑑みて、それぞれのお客様に最適な方式やシステム構成をご提案しています」(井坂氏)。

さらにPALTEKは5Gを使って4Kを低遅延で無線伝送するソリューションの実証実験も行っている。5Gに対応したSRT伝送ソリューションの提供が近く実現しそうだ。

システム構築からサポートまでSRT伝送を総合的に提供

映像伝送プロトコルとしてSRTの認知が進むにつれ、各国のコーデックメーカーが発売するSRTエンコーダ/デコーダ、ソフトウェアなどの製品が増えている。PALTEKはこれらの競合企業に対して、強みを持っている。

まず、同社は「映像伝送ソリューション」でSRTエンコーダ/デコーダとともにネットワークも含めて提案できることで他社と差別化している。SRTエンコーダ/デコーダの販売やレンタルが中心の企業は多いが、SRTの技術に詳しくないユーザが短期間でシステムを構築し、 伝送・配信時にネットワーク環境を監視しながら調整を行うのは簡単ではない。 システム構築から運用サポートまでを合わせて提供する「映像伝送ソリューション」は、利便性が高い。

また、PALTEKはHaivision社の日本における代理店として、「映像伝送ソリューション」用にHaivision社製SRTエンコーダ/デコーダを提供しているが、 エクスプローラの自社ブランド製品も提供している。Haivision社とエクスプローラの幅広い製品ラインナップの中から、顧客にとって最適な製品を提供できる。相互接続性のある2社以外のSRTエンコーダ/デコーダを含めたシステム構築にも対応している。

放送・映像・防衛・一般企業などの引き合い・導入が増加中

現在、放送局や阪神タイガースなどのスポーツチームなどが、国内間や日本-海外間のリモートプロダクションやコンテンツ配信に「映像伝送ソリューション」を活用している。
「SRT = PALTEK/エクスプローラ」という認知が浸透してきている放送・映像業界だけでなく、防衛、一般企業などの業界・分野でも「映像伝送ソリューション」の導入が増えている。 国の公的機関に対するビジネスの割合も大きい。屋外などの過酷な環境下でも耐えられるSRT対応製品を提供している実績は、PALTEKが提供しているソリューション、製品、サポートの高信頼性の証と言えるだろう。

特にコロナ禍以降は各業界から「映像伝送ソリューション」の引き合いが増えている。「弊社からWebサイトやニュースレターなどでソリューションをご紹介すると、これまで以上に引き合いが強く、詳しい説明を聞きたいとか、伝送試験をやってみたいといったお客様が増えています」(井坂氏)。

日本の顧客は新しい映像伝送技術に対しては比較的保守的だったが、コロナ禍でリモートプロダクション、リモートワークの活用が喫緊の課題となっているため、従来の傾向が大きく変化しているようだ。SRTの活用によって高画質・低遅延・低コストの映像伝送を手軽に導入できるPALTEKの「映像伝送ソリューション」は、放送・映像業界から医療機関、一般企業まで、 ニューノーマルに対応したワークフローの再構築を急ぐ企業に求められている。

 

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