COM-HPC®とは ~特長とCOM Express®との比較~
皆さん、こんにちは。
COM-HPC®とよばれる最新のPICMG規格はご存知でしょうか。
本ブログでは、COM-HPC®の特長や従来のCOM Express®との違いについてお伝えします。
それでは始めましょう。
目次
COM-HPC®とは
Computer-On-Module for High Performance Computing を表し 高性能エッジコンピューティング向けコンピュータオンモジュールを指します。 |
COM-HPC®は、PICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group)が注力している新しい規格の一つです。PICMGは、25年以上の組み込みコンピューティングにおける経験を持っており、数百社の参加企業により策定された50以上の規格を発行しているコンソーシアムです。弊社が代理店を務めるcongatec社のマーケティング担当ディレクター クリスチャン・エダー(Christian Eder)氏は、COM-HPC®の規格を発行しているPICMG内の、COM-HPC Working Groupについてchairmanを務めています。PICMGでは、CompactPCI®、MicroTCA®、COM Express®、そして今回紹介するCOM-HPC®など多くの規格群を策定しています。
皆さんご存じの通り、PCI ExpressはGen4、Gen5とアップグレードしていますが、従来のCOM Express®ではPCI-Express Gen3と10Gb Ethernet x1portまでしかサポートしていません。今後5G、AI、IoTが社会に実装されていく中で、エッジコンピューティングの必要性が高まってきますが、COM Express®ではエッジコンピューティングで求められる高いパフォーマンスは満たせないため、この分野でのCOM-HPC®の活用が期待されています。一方、COM Express®(Type7/Type6)がすぐになくなるわけではなく、並行して製品開発は継続されていくので、ニーズに合わせて選択することが可能です。
COM-HPC®の特長とは
COM-HPC®の特長については以下の通りです。
- ハイエンドCPU、大容量メモリ(最大1TB:最大8スロット)対応
- 次世代I/O規格をサポート
- PCIe Gen5(32GT/s)
- USB4(最大4Port、40Gbs)
- 25GbEthernet(最大8port、将来的には100Gb)をサポート
COM-HPC®は、COM Express®の単なる延長線上の規格ではなく、COM Express®で対応ができなかった部分を補完する役目を担う、サポート範囲が広がった新規格というわけです。また、COM-HPC®には「COM-HPC® Server」と「COM-HPC® Client」の2種類のタイプがあり、サイズは計5つあります。
「COM-HPC® Server」D:160mm×160mm / E:160mm×200mm
「COM-HPC® Client」A:120mm×95mm / B:120mm×120mm / C:120mm×160mm
(出典:congatec GmbH)
例えば、Serverに関しては、ネットワークコミュニケーション関係や防衛、半導体テスト機器などで活用が期待され、一方、Clientでは医療やFAやゲーミング、デジタルサイネージなどでの活用が期待されています。COM-HPC®にはCOM-HPC® ServerとCOM-HPC® Client2種類スペック比較については以下の通りです。
図1 COM-HPC® ServerとCOM-HPC® Clientの比較
(出典:congatec GmbH)
COM-HPC®とCOM Express®との違いについて
さて、従来のCOM Express®と機能面で比較をする前に、『COMとは何か』をおさらいしてみましょう。
COMは Computer-on-Moduleを指し、例えば一般的な産業用のシングルボードやマザーボードの場合、1枚の基板の中に、CPUやチップセット、フラッシュメモリやRAM、USBやEthernetと呼ばれるペリフェラル、電源回路などが収まっていますが、COMの場合は、小さな回路基板にプロセッサと重要なペリフェラルのみが実装されており、アプリケーション固有のキャリアボードの標準コネクタに接続して使用します。COMを使用することで、開発工数と市場投入までの時間を最小限に抑えることができます。
COM-HPC®はCOMの概念を持っているので、同様に開発工数と市場投入までの時間を最小限に抑えることができるのです。
では、従来のCOM Express®と機能面で比較をしてみましょう。
COM-HPC®、COM Express®の選定について、まずスペックを比較してみましょう。
COM Express® Type 7は、最大で32レーンのPCI Expressと128GBのSODIMMメモリをサポートします。
より多くのPCI ExpressレーンやPCI Express Gen5、TDP65W以上のCPU、または128GB以上のメモリ容量が必要な場合には、COM-HPC®を採用する必要があるのです。
(COM-HPC®の基板サイズは、RDIMMや800pinコネクタの影響もあり、大きくなります。)
表1 COM-HPC®とCOM Express®の比較
COM-HPC® Server | COM Express® Type 7 | COM-HPC® Client | COM Express® Type 6 |
---|---|---|---|
65x PCIe (up to Gen5) |
32x PCIe (up to Gen4) |
49x PCIe (up to Gen5) |
24x PCIe (up to Gen4) |
1x Base-T (max 10Gb) |
1x GbE | 2x Base-T (max 10Gb) |
1x GbE |
8x BASE-KR (max 25Gb) |
4x BASE-KR (max 10Gb) |
2x BASE-KR (max 25Gb) |
3x DDI eDP,LVDS,VGA |
3xDDI eDP,DSI |
|||
HDA |
|||
2x MIPI CSI | |||
4x USB 3.2 (max 10Gb) |
2x I2S,Soundwire | 4x USB 3.2 (max 10Gb) |
|
2xUSB4 | 4x USB 2.0 | 4xUSB4 | 8x USB 2.0 |
2xUSB3.2 (max 20Gb) |
|||
4xUSB2.0 | 2x SATA | 4xUSB2.0 | 4x SATA |
2xSATA | 8x GPIO, 2x UART, I2C,SPI,eSPI/LPC |
2xSATA | 8x GPIO, 2x UART, I2C,SPI,eSPI/LPC |
12xGPIO,2xUART, 2x I2C,2x SPI, eSPI,SMB |
12xGPIO,2xUART, 2x I2C,2x SPI, eSPI,SMB |
表1からも分かるように、COM-HPC®は COM Express®と比べてハイエンドなCPU、大容量メモリ、そして高速なI/O接続を実現することができます。従来のCOM Express®Type6/7/10は、主に一般的な組み込み用途で用いられることが多いかと思いますが、COM-HPC®は、ハイエンドなアプリケーションでもCOM Express®よりもポジショニングが高いため、コンピュータオンモジュールソリューションをすべてカバーすることができます。
COM-HPC®のさらなる展開
COM-HPC®は高性能のCPUを対象とした規格と称されていますが、これに続きLow PowerのCPUに対応したCOM-HPC Miniが2022年6月にドイツ、ニュルンベルクで開催された「embedded world 2022」で発表されました。PICMG forms new smaller COM-HPC module committee and announces FuSa support at embedded world 2022