【USB vs Thunderbolt™】データ渦の時代を生き抜く最新インタフェース事情

みなさん、こんにちは。
テクノロジーの進化とともに、私たちの生活をとりまく"データ"は加速度的に増え続けています。大量のデータから価値ある情報を発見し、うまく活用していく力が何より重要になってきます。
また、クラウドストレージの普及や4K/8K動画の普及によって、個人でも企業でも大容量データの送受信が日常的に行われるようになりました。また、動画編集や3DCG制作、AIシステムの学習データ転送など、ハイエンドユーザーはもちろん、一般の映像クリエイターやエンジニアでさえ、Gbps(ギガビット/秒)を超える高速な転送環境が必要不可欠になっています。
そこで本ブログでは、そんな"超高速データ転送"を実現するインタフェースとして活用されているUSBとThunderbolt™にスポットをあて、2つの規格が"超高速データ転送"をどのように実現しているのか、その違いと特徴を解説していきます。
目次
USBの速度の進化
現在よく目にするUSBですが、1996年に登場以来着実に進化を遂げてきました。
キーボードやマウス、プリンターから外付けストレージまで、さまざまな周辺機器と親和性が高いことから、今でも様々な場面で活躍しています。
USB 3.2 Gen 2x2では、理論値として最大20Gbps(2.5GB/秒)の転送速度を実現しています。これは従来の世代と比べると飛躍的な向上です。
ただし、この最高速度を発揮できるのはUSB 3.2 Gen 2x2に対応した最新の機器同士の組み合わせに限られます。賢く使い分ける必要がありそうですね。
表1. USB規格と速度
USB規格 | 速度 |
---|---|
USB 1.0(1996年) | 理論値 1.5Mbps(0.19MB/秒) |
USB 2.0(2000年) | 理論値 480Mbps(60MB/秒) |
USB 3.0(2008年) | 理論値 5Gbps(625MB/秒) |
USB 3.1(2013年) | 理論値 10Gbps(1.25GB/秒) |
USB 3.2 Gen 2x2(2017年) | 理論値 20Gbps(2.5GB/秒) |
理論値で最大20Gbpsの驚異的な速度を誇るUSB 3.2ですが、実際の転送速度は使用環境によって大きく左右されます。
ケーブル長が長くなるほど速度は落ちてしまい、3m以上になると最大10Gbpsにとどまってしまいます。また、接続する機器の性能やOSの制約も大きな影響を及ぼします。
例えば市販のUSB 3.2対応ポータブルSSDでも、実効転送速度は約600MB/秒〜1050MB/秒とバラつきがあります。弊社が取り扱うMicron社の「7450 PRO」のようなハイエンドSSDなら約5,000MB/秒を上回る速度が出せますが、HDDだと200MB/秒前後が限界です。
さらに、PCIe 4.0やPCIe 5.0対応のマザーボードとOSの処理能力にも規定されてしまうため、USB 3.2の実効速度はかなり抑えられてしまうのが実情です。
しかし、従来のUSBと比べれば格段の高速化が図られた点は間違いありません。大容量データを扱う現代のニーズに対して、USB 3.2は大きな役割を果たしてくれることでしょう。
より高速なThunderbolt™の登場
Thunderbolt™についてみてみましょう。
Thunderbolt™は、USBと比較すると圧倒的な転送速度を実現しています。Thunderbolt™ 3と4の理論値は、実に40Gbps(5GB/秒)にも及びます。
表2. Thunderbolt™規格と速度
Thunderbolt™規格 | 速度 |
---|---|
Thunderbolt™(2011年) | 理論値 10Gbps(1.25GB/秒) |
Thunderbolt™ 2(2013年) | 理論値 20Gbps(2.5GB/秒) |
Thunderbolt™ 3(2015年) | 理論値 40Gbps(5GB/秒) |
Thunderbolt™ 4(2020年) | 理論値 40Gbps(5GB/秒) |
Thunderbolt™が高速なデータ転送を実現できる理由は、PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)の技術を活用していることにあります。
PCIeとは、パソコン内のデバイス間で高速通信を行うためのインタフェースです。SSD、GPU、LANカードなどさまざまなデバイスがPCIeスロットで接続されています。
PCIeには「レーン」と呼ばれる通信チャンネルが備わっており、複数のレーンを組み合わせることで高速な帯域幅を確保できます。一般的なPCIeスロットは1レーン、4レーン、8レーン、16レーンなどの構成があります。
Thunderbolt™はこのレーン技術を活用し、最大4つのPCIeレーンを束ねることで、最大40Gbpsという驚異的な転送速度を実現しています。さらに、同じポートからDisplayPortの映像出力もサポートしています。
Thunderbolt™は、PCIeの高速データ転送技術とDisplayPortの高解像度映像出力機能を1本のケーブルで実現した革新的なインタフェースです。ケーブル1本で高速データ転送と高解像度映像出力を同時に行えるため、大容量ストレージの接続や4K/8K動画のリアルタイム処理などのハイエンド用途に最適です。
Thunderbolt™はまさに次世代のインタフェース規格と言えるのではないでしょうか。
用途に応じたUSBとThunderbolt™の使い分け
USBとThunderbolt™はどちらも優れたインタフェースですが、用途に応じて使い分けることが重要です。
<USBがおすすめの用途>
- 小容量データ転送(写真/動画バックアップなど)
- マウス、キーボード、プリンターなどの一般的な周辺機器接続
- HDDなどの安価な外付けストレージ
USBは値段が手頃で扱いやすく、日常的な機器接続やバックアップ用途に適しています。
USB 3.2ならば小規模なデータアクセスも十分に高速です。また、USB 3.2のハブを利用すれば、1つのポートから複数のデバイスを簡単に接続できるメリットもあります。
<Thunderbolt™がおすすめの用途>
- 大容量データの高速転送(動画編集ファイル送受信など)
- 4K/8K動画のキャプチャ・リアルタイム処理
- 高負荷作業(3DCAD、AIレンダリング、仮想マシン稼働など)
一方のThunderbolt™は、その高速転送性能を活かせる用途に適しています。価格はUSBと比較して高めですが、外付けSSDなど高速ストレージとの大容量データ転送に最適です。
Thunderbolt™ 4なら理論値40Gbpsの驚異的な速さを実現できるため、4K/8K動画のリアルタイムキャプチャや編集作業が非常にストレスフリーに行えます。高解像度動画データの転送でカクつきの(ぎこちない動きをする)心配がありません。
また、3DCGレンダリングやAI学習データの授受、仮想マシンの高速化など、ハイエンド作業にThunderbolt™は強力な味方になります。データ処理に時間がかかる重たい作業でも、待ち時間を大幅に短縮できます。
さらにThunderbolt™ 4ドックを使えば、デスクトップ周辺機器一式とThunderbolt™ SSDを1本のケーブルで接続可能です。ノートPCの作業効率が格段にアップするでしょう。
Thunderbolt™ 4搭載のNAS「TBS-h574TX」
QNAP社のNASサーバ「TBS-h574TX」は、Thunderbolt™ 4ポートが2基搭載されています。
動画編集やグラフィックス処理など、クリエイティブワークに欠かせないハイパフォーマンスな周辺機器との接続に最適で、4K/8Kディスプレイを2台同時接続することも可能なので、デュアルモニター環境を作れば作業効率が大幅に向上します。
また、NVMe SSD「E1.S」か「M.2」を最大5倍まで搭載することが可能で、動画編集などのデータ処理が高速になるのはもちろん、大容量ファイルの共有やバックアップにも最適です。そして、10GbEネットワークポートも2基搭載しているので、大容量データの転送も快適に行えます。
動画編集、3Dモデリング、写真編集など、クリエイティブな仕事をする人はもちろん、大容量ファイルの共有やバックアップ、マルチメディアの活用など、さまざまなニーズにも応えられる優れた製品ですので、これからNAS選びをする際はぜひTBS-h574TXを検討してみてください。
表3. TBS-h574TXのスペック
NAS | TBS-h574TX |
---|---|
CPU | Intel® Core™ i5-1340PE 12C(4P+8E)/16T up to 4.50GHz |
メモリ | 16GBオンボード |
SSD | E1.S or M.2 2280×5 |
Thunderbolt™ポート | Thunderbolt™ 4 ×2ポート |
図1. TBS-h574TXの正面と裏
おわりに
いかがでしたでしょうか。
USBとThunderbolt™の違いや特徴についておわかりいただけたと思います。
両者には大きな性能の開きがあり、その進化の方向性も異なっています。
USBは着実に転送速度を向上させてきた一方で、Thunderbolt™はPCIe技術の活用により、さらなる高速化を実現しており、理論値で最大40Gbpsという圧倒的なスピードを誇ります。
しかし、単に速さだけでなく、コストやユースケースに合わせた使い分けも重要になってきます。小規模データ転送や一般的な機器接続ならUSBで十分ですが、大容量ファイルや4K/8K動画の扱いにはThunderbolt™がより適しています。
また最先端のThunderbolt™ 4規格を搭載したNASサーバも登場しています。
QNAP製「TBS-h574TX」なら最大40Gbpsの転送速度に加え、高速ネットワーク対応や大容量NVMe SSDなど、創作活動に不可欠な高性能スペックを備えています。
より快適なクリエイティブ作業を実現するためにも、最新の高速データ転送技術の活用を検討されてはいかがでしょうか。気になる点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。