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PCI Express®(PCIe®)は最先端機器からレガシー機器まで幅広く ~データセンターと共に進化、長期供給への対応~

PCI Express®(PCIe®)は最先端機器からレガシー機器まで幅広く ~データセンターと共に進化、長期供給への対応~

寄稿:Diodes社 シニアマーケティング
ディレクター Kay Annamalai氏

データへの関心は世界中で高まっており、企業や組織では、より多くの情報をより迅速に処理することを求められ、競争が激化しています。

このような競争の激化は、帯域幅を大量に消費する大規模データセンターで顕著に現れています。このような傾向は、エンターテインメントストリーミングやIoTアプリケーション、コネクテッドカー、自律走行に関連するサービス、集中的な分析を伴う企業のDX化などにおいても高まり続けています。

目次

データセンターが進化させる最先端インタフェース

膨大なデータ処理、データの保存と管理、データの取り出しと処理、そしてクライアントへの付加価値の提供など、インフラ全体におけるデータ転送プロトコルの高速化が急務となっています。

現在、ネットワークやインタフェースの規格を担うさまざまな団体は、標準規格から派生して次のパフォーマンス向上を引き出すために精力的に活動しています。しかし、ネットワーク上の異なるポイント間での過度の速度の不一致はボトルネックに繋がる可能性があります。

つまりネットワークやインタフェースの規格において、最先端であればあるほど、その進歩のスピードは速い必要がありますが、異なるプロトコルが同じようなスピードで進歩することも重要なのです。

PCI Express® (PCIe®) の進化は、大手データセンター事業者のニーズに応じて進化するマルチギガビット・イーサネットの仕様とほぼ同じペースで進んでいます。

通信事業者各社では、100GBから最新の400GB接続を採用する動きが見られます。この400GBを最大に活用するために、データセンターのサーバやストレージ、AIアクセラレータカードなどのローカル周辺機器を接続する、より新しく高速なPCIe®規格が必要とされています。

さて、2017年に発表されたPCIe 4.0は、前世代の帯域幅を2倍に拡大しました。続いて2019年にPCIe 5.0が発表され、転送速度が32GT/sに引き上げられ、x16の総帯域幅が128GB/sとなりました。

以下の表1は、PCIe® 規格ごとの集計速度をまとめたものです。拡張インタフェース規格であるPCIとその関連規格の策定/管理を行っているPCI-SIG®(PCI Special Interest Group)ではすでにPCIe 6.0の策定を進めており、2022年1月に新仕様が公開されました。今後もPCIe®は、パフォーマンスを必要とする周辺機器通信のための規格として選ばれ続けると考えられます。

表1 PCIe®世代ごとの集計速度

左右にスクロールしてご覧ください
PCIe世代 ビットレート 相互接続(実効)
帯域幅
帯域幅
レーン(片)方向
総帯域幅(x16)
PCIe 1.0 2.5GT/s 2Gb/s 250MB/s 8GB/s
PCIe 2.0 5.0GT/s 4Gb/s 500MB/s 16GB/s
PCIe 3.0 8.0GT/s 8Gb/s 1GB/s 32GB/s
PCIe 4.0 16.0GT/s 16Gb/s 2GB/s 64GB/s
PCIe 5.0 32.0GT/s 32Gb/s 4GB/s 128GB/s
PCIe 6.0 64.0GT/s 64Gb/s 8GB/s 256GB/s

PCIe®仕様ならではの長期供給サポート

現在、PCIe 5.0の製品が市場に出始めています。

しかしながら、最新の仕様にあわせて設計されたデバイスに加え、旧世代もサポートする既存のPCIe®チップへのニーズも依然として存在します。PCIe®では、いくつかのPCIe®規格から最適なソリューションを選択することにより、卓越した性能を実用的かつ手頃な価格で実現することが可能です。

PCIe®は下位互換性をもっているためPC、ゲーム、一部のエンタープライズコンピューティングやネットワーキングのアプリケーションなどにおいて、従来実績のある高性能なソリューションを提供することが可能です。下位互換性はPCIe®の重要な強みと言えます。

チップメーカでは、PCIe®規格の各世代に関連する設計IPとカスタマーサポートのノウハウを引き続き活用することができます。

PALTEKが販売代理店を務めるDiodes社は、PCIe®の第1世代、第2世代、第3世代、第4世代、第5世代(図1)をサポートする標準ICを豊富に取り揃えています。設計の際は、これらのいずれかを選択することで、さまざまなアプリケーションに対応した高性能なインタフェースを実装することができます。
図1 Diodes社のポートフォリオは、PCIe 1.0、2.0、3.0、4.0、5.0に対応する包括的な選択肢を提供します。

図1 Diodes社が提供するポートフォリオ

出典:Diodes Incorporated

 

Diodes社のPCIe®用ICで柔軟な設計を実現

ブリッジとスイッチは、図1に示すように、PCIe®アーキテクチャの重要なコンポーネントであり、さまざまなタイプのホストとエンドポイント機器の間のインタフェースに使用されます。

パケットブリッジは通常、OSI参照モデルにおける2つの層間、または2つのプロトコル間のインタフェースを提供します。ブリッジは、PCIe®とPCI-XなどのレガシーPCI規格との接続、USBポートやUARTバスインタフェースとの接続にも使用されます。

パケットスイッチは、通常、単一のルートコンプレックスを複数のポートに拡張するために使用されるマルチポート/マルチレーン・デバイスです。ペリフェラルやラインカードなど、他のピアシステムにアクセスするための追加レーンが用意されています。

Diodes社では、さまざまなポート構成と変換機能を備えたパケットブリッジとスイッチを提供しています。

さらに、Diodes社は、PCIe®パケットスイッチとPCIe-to-USB2.0ブリッジの機能性を組み合わせて、「PI7C9X442SL PCI Express-to-USB 2.0 PCIe Swidge™」を製品化しました。この革新的なデバイスは、1つのPCIe x1アップストリームポートから、2つのx1ダウンストリームポートと4つのUSB 2.0ポートに接続することができ、システムのホストプロセッサから複数のPCIe®およびUSBデバイスへのアクセスを実現します。

高速システムでのシグナルインテグリティを高めるため、あるいは外部グラフィックカードや外部ストレージなどにより長い接続で信号を駆動する必要がある場合には、図 1に示したように、PCIe 2.0、PCIe 3.0、PCIe 4.0用のPCIe® ReDriver™を使用することが可能です。

ReDriver™は、イコライゼーションやプリエンファシスなどの技術を使用して伝送線路の損失を補償し、遅延を最小限に抑える出力ドライバを搭載しています。その結果、信号のマージンを回復し、ジッタを最小化し、受信デバイスでのビットエラーレ―トを効果的に低減することができます。ReDriver™は、クロックやデータのリカバリーを含む追加機能を統合したリタイマーよりも、実装が簡単でコストパフォーマンスに優れます。

さらに、Diodes社は、PCIe 2.0、PCIe 3.0、PCIe 4.0シグナルマルチプレクサ/デマルチプレクサのポートフォリオを有しています。これらは、グラフィックスや演算器の帯域幅拡張のために、単一のPCIe®レーンを複数のレーンに接続する際やシステムをマルチプロトコルインタフェースに接続するために使用します。また、Diodes社は、すべてのPCIe®規格に対応したクロックジェネレータ、クロックバッファ等のタイミングIC、及び水晶発振器をラインナップしています。

Diodes社のPCIe®クロックジェネレータは、PCIe®アプリケーションや同様の性能を要求する他のシステムクロックに適した、非常に低い出力ジッタのクロック信号周波数を生成することができます。

クロックバッファは、クロックジェネレータの基準信号を受け取り、PCB全体に分配するための複数の出力を生成します。PCIe®の仕様を満たすためにジッタを最小化するDiodes独自のPLL回路を採用し、さまざまな構成へ対応可能です。

Diodes社の1.8V PI6CG18xxxクロックジェネレータと1.5V PI6CG15xxxクロックバッファは、PCIe 4.0 へ対応した2チャネル、4チャネル、8チャネル構成のタイミングICです。1出力チャネルごとに4つの外部終端抵抗を内蔵しており、8チャネル品の場合、部品点数を32個減らすことができます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

PCIe® 規格は開発の最前線にあり、最先端の超大規模データセンターが要求する広帯域相互接続を可能にします。また、最速のマルチギガビット・イーサネット仕様に密接に対応した最新世代の高速性に加え、旧規格の長期供給と世代間の確実な下位互換性により、民生品、デスクトップPC、産業機器で求められる実用的かつ安価で高性能なソリューションを実現することが可能になっています。

Diodes社のPCIe®スイッチ、ブリッジ、ReDriver™、タイミングIC及び水晶発振器のポートフォリオのように、複数世代の規格をカバーするPCIe®チップの幅広いポートフォリオをサポートすることは、成功に不可欠な要素となっています。


*PCI Express®、PCIe®、PCI-SIG®は、PCI-SIG Corporationの商標または登録商標および/またはサービスマークです。その他すべての商標は、それぞれの所有者に帰属します。
*ReDriver™は、Diodes Incorporatedの商標です。