クラウドサーバ×オンプレサーバで大容量データを賢くバックアップ

大容量データのバックアップにおける課題
現代のビジネス環境では、データは企業の重要な資産となっており、データのバックアップは絶対に欠かせない作業となっています。特に動画、CAD、大容量の画像ファイルなどの大容量データを扱う場合、そのバックアップは一層の重要性を持ちます。
しかし、大容量データのバックアップは、ストレージの容量やコスト、時間など、さまざまな課題を伴い、従来のオンプレミス(自社内)のサーバだけでは対応が困難になってきています。
一方で、クラウドサービスの普及により、大容量データのバックアップ環境が整備されつつあります。クラウドサーバは低コストで大容量のストレージを利用でき、高速なデータ転送が可能です。しかし、ネットワーク回線に依存するため、万一の回線障害では、データにアクセスできなくなるリスクがあります。
そこで注目されているのが、クラウドサーバとオンプレミスのエッジサーバ(小規模サーバ)を組み合わせ、大容量データを賢くバックアップするハイブリッド手法です。エッジサーバは、クラウドとローカル側の中継地点として機能します。この方式を上手に活用することで、大容量データの保護力を高められるのです。
目次
クラウドサーバとオンプレサーバの役割分担
クラウドサーバとオンプレミスのエッジサーバは、それぞれ異なる役割を担っています。
クラウドとオンプレミスのメリット・デメリットについては、 こちら の記事をご覧ください。
クラウドサーバの役割は、大容量のデータを保管する「メインストレージ」です。クラウドならではの優れた拡張性と低コストを生かし、必要に応じてストレージ容量を柔軟に確保できます。また、インターネット経由でデータにアクセスできるため、場所を選ばずバックアップや復元ができます。
一方、オンプレミスのエッジサーバは、社内ネットワークに接続された小規模サーバで、「キャッシュストレージ」として機能します。頻繁にアクセスされるデータは、エッジサーバにキャッシュされるので、レスポンス性能が向上します。さらに、ネットワーク障害時には、キャッシュデータにローカルでアクセス可能です。このため、クラウドのみに依存しない、堅牢なバックアップ環境を実現できるのです。
図1. クラウドとオンプレミスの連携イメージ図
クラウドとオンプレを連携させるメリット
クラウドサーバとオンプレミスのエッジサーバを連携させると、大容量データのバックアップでさまざまなメリットが生まれます。
第一に、バックアップと復元の運用がスムーズになります。通常は日次でクラウドにフルバックアップを行い、エッジサーバには頻繁に更新されるデータを同期します。復元時は、最新データをエッジサーバから、過去データをクラウドから取得すれば済みます。
第二に、ネットワーク負荷を大幅に軽減できます。通常運用中のデータアクセスはエッジサーバが受け持つため、クラウドへの接続は減少します。結果として、クラウドとの通信はバックアップ時のみとなり、WAN回線の帯域を大幅に節約できるのです。
第三に、コスト効率も改善します。物理的なストレージを増設する必要がなく、必要に応じてクラウドサーバの容量を増やすことができます。これにより、初期投資と運用コストを削減できます。
第四に、災害対策としても効果的です。クラウドとオンプレサイトが物理的に離れていれば、災害発生時にデータの分散バックアップが機能し、どちらかからデータを復元可能です。つまり、データ保護の冗長性が高まるということです。
クラウドとオンプレの連携のポイント
クラウドとオンプレミスの連携を強化することで、ビジネスプロセスの最適化を実現することができます。これらを実現するために、3つのポイントに焦点を当てて説明します。
1. データのリアルタイム処理
クラウドは大容量データの保存と高度な処理が強みですが、オンプレミスは低レイテンシやリアルタイム性が要求される環境に適しています。
例えば複数人で映像編集を行う業種では、大容量の高解像度動画データを扱う中でのリアルタイムな変更やプロジェクトの進捗管理が欠かせません。進捗が正確に反映されないと制作スケジュールが乱れ、最終的な成果物の品質にも悪影響が出るためリアルタイム処理は重要です。
2. セキュリティ対策の徹底
クラウドとオンプレミスの連携においては、データの転送と保存がセキュアであることが不可欠です。
例えばゲーム業界ではクラウドを利用したゲーム開発を行う企業もありますが、クラウドへの転送中にセキュリティ不備があると機密情報が漏洩する事態が発生してしまいます。
そのため、クラウドに送信される前にオンプレミスでユーザ認証やデータの暗号化を行い、クラウドまではVPNなどでセキュアに保護された通信経路を通ってデータを送る必要があります。
3. 整合性と冗長性の確保
クラウドとオンプレミスの連携において、データの整合性チェックとデータの冗長化による保存が大切です。
映像データにはタイムコード、解像度、色空間などのデータが含まれていますが、これらのデータが整合せず異なる情報が付与されると、クラウドとオンプレミスのデータで差分が出てしまい品質低下を引き起こしてしまう可能性があります。
また、編集作業途中のデータが失われると、膨大な時間やリソースが無駄になってしまうため、データはクラウドとオンプレミスでの冗長保存が重要です。
まとめ
エッジサーバとクラウドサーバの連携による大容量データのバックアップは、ビジネスにおけるデータ管理の新たな可能性を示しています。データの可用性、セキュリティ、コスト効率の向上は、企業の競争力を高める要素となります。
クラウドサーバとオンプレミスのエッジサーバを連携させれば、大容量データのバックアップを賢く実現できます。
クラウドサーバはメインストレージとして大容量データを保管し、エッジサーバはキャッシュストレージとして頻繁アクセスデータを保持します。この役割分担により、バックアップと復元の運用を合理化できます。また、ネットワーク負荷を大幅に軽減し、災害時のデータ分散バックアップも可能になります。
クラウドサーバとエッジサーバの連携により、大容量データに対する可用性、セキュリティ、コスト効率の向上が確保でき、スループット、運用効率ともに最適化できます。企業にとっては、データ資産を効果的に守りつつ、コストも抑えられる有力な選択肢となっていきます。
その他、気になる点がございましたらお気軽にお問い合わせください。