1. 株式会社PALTEK
  2. TECHブログ
  3. 製品情報
  4. 5G時代に注目されるエッジコンピューティング

TECHブログ

5G時代に注目されるエッジコンピューティング

5G時代に注目されるエッジコンピューティング

日本で2020年春から商用サービスがスタートした第5世代移動通信システム、通称「5G」。
5Gは「大容量」「超低遅延」「多数同時接続」という3つの特長を持ち、次世代の通信インフラとして社会に大きな技術革新をもたらすことが期待されています。
5Gの実用化によって、どのような世界が実現できるのか、またその課題についてみてみましょう。

目次

5Gの将来像

大容量、超低遅延、多数同時接続という特長をもつ5G。
これから到来する5Gを活用した社会はどのようなものになるのでしょうか。

例えば、街角や店舗、交通機関などにある情報カメラや監視カメラが4K/8Kの高精細画像となることで認識精度が向上します。これにより自動運転の高度化や犯罪の検挙向上、マーケティングへの活用などが期待されています。

また、世界のどこかで行われているイベントや競技などを8K映像で撮影し5GでVR映像として配信することで、遠隔地にいてもリアルタイムで、かつ臨場感がある映像を視聴できるでしょう。

そして、この5Gの環境を自治体や企業などが個別に構築し利用できるローカル5Gの活用も進んでくると考えられます。

総務省は未使用周波数帯域のうち、新たに利用可能な割当枠を「ローカル5G帯域」として、その使い方、無線局の免許申請など制度化しています。ローカル5Gは、IoTやスマートファクトリー、自動運転基盤などへの活用が期待されています。

このような未来がすぐそこまで来ています。

しかし、これらを実現する上で課題となるのがネットワークへの負荷です。4K/8Kで撮影された映像データは容量が大きく、ネットワークと記録の負荷が非常に増大します。

注目されるエッジコンピューティング

5Gの特長である超低遅延を活かすために注目されているのがエッジコンピューティングです。従来クラウドで行われている処理の一部をエッジ側となる基地局の小規模なデータセンターで行うことで、工場機械制御、都市・プラント交通制御、医療画像診断装置など即時に反応が求められる処理を効率的に実現することができます。このようなエッジコンピューティングの方式をMEC(Multi-Access Edge Computing)と呼びます。

MECは、エッジコンピューティングの規格としてETSI(欧州電気通信標準化機)が標準化を進めているもので、一定エリア内の通信処理の効率化を図る技術です。
MECの活用により、遅延が減り、広帯域幅アプリケーションを準リアルタイムで実行できます。今後展開されるローカル5Gにおいても、個人情報のカプセル化、IoTによる情報のローカル管理などが可能となるのです。

このように5G時代到来により重要な役割を果たすと期待されているMECでは、超低遅延を実現するために高速データ処理が求められています。その開発を加速する最適なプラットフォームとして、そして高速計算用加速器(アクセラレータ)として注目されているザイリンクス社のZynq® UltraScale+™ MPSoC を搭載した「M-KUBOS」が登場しました。 (写真1)

写真1:M-KUBOSの外観
写真1:M-KUBOSの外観

MECに最適なプラットフォーム

MECを高速データ処理が可能なM-KUBOSで実現することで、取得した映像をM-KUBOSで圧縮し5G回線で基地局、またサーバーに送信することができます。

さらに、慶應義塾大学天野教授が中心となって提唱しているマルチFPGAシステムFlow-in-Cloud (FiC) に代表される並列演算システムを複数のM-KUBOSで実現することで、画像処理やAIによる物体検知などの処理を街角に設置した基地局で処理をし、その処理結果のみを圧縮しサーバーに送信することが可能になります。(天野教授が提唱するマルチFPGAシステムFiCの詳細は、こちらの記事をご覧ください

M-KUBOSは、さまざまな利用シーンを想定して、あらゆる規格に対応し、すべての高速シリアルに対応できるように設計されています。(図1)

図1:FPGAを採用した5G時代MECの将来像
図1:FPGAを採用した5G時代MECの将来像

また、高速処理を行う上でもう一つ忘れてはいけないのが、システム全体を高速化するということです。
高速処理において基板内での高速化は必須ですが、基板同士の接続の高速接続を行わないとシステム全体を高速化する上でボトルネックになってしまいます。
この問題に対応するために、M-KUBOSはSamtec®社のFireFly™コネクタで基板間を高速接続しており、従来の産業用コンピュータとは大きく異なっています。 (写真2)

M-KUBOSに関する詳細は、こちらからご覧ください。

写真2:M-KUBOS同士をFireFly™で接続
GTYすべてを28Gbpsで接続する試験を行っています。総帯域は400Gbps。
写真2:M-KUBOS同士をFireFly™で接続

また、M-KUBOSに関する説明動画については以下をご覧ください。

まとめ

5G時代に期待されるMECまたAIの推論処理において、高速データ処理を行うことが可能なFPGAコンピューティングプラットフォーム 「M-KUBOS」。これから数回にわたり、その概要や活用の方法などを詳しくご紹介します。