【アナログ回路豆知識】バイポーラトランジスタの応用回路例

ダイオードやトランジスタ、MOSFETなどのディスクリート部品を使った具体的な回路例をお伝えする「アナログ回路豆知識」。
第2回目は、「バイポーラトランジスタの応用回路例」と題してお送りいたします。
目次
バイポーラトランジスタとMOSFETの比較
バイポーラトランジスタにはPNPとNPN、MOSFETにはP型とN型が有ります。

図1 バイポーラトランジスタとMOSFETの回路図
これらの違いは以下のとおりです。
1.制御方式の違い
バイポーラトランジスタはベース電流制御、MOSFETは電圧制御です。
2.入力インピーダンスの違い
バイポーラトランジスタのインピーダンスは低いが、MOSFETはハイインピーダンスです。
3.消費電力の違い
バイポーラトランジスタはベース電流のため消費電力は大きいですが、MOSFETのゲート電流は0Aのため低消費電力です。
4.双方向性の違い
バイポーラトランジスタは一方向に、MOSFETは双方向に流れます。
今回はバイポーラトランジスタについて、よく使われる回路例を紹介していきます。
バイポーラトランジスタによるインバータ回路例

図2 バイポーラトランジスタによるインバータ回路例
インバータ回路においてI1、I2、IB、IC電流値を計算します。
- VBE=0.6V、VCE(sat)=0.1Vとする。
PDTC143ZU 50V、100mA
I1=3.3-0.6÷4.7KΩ=0.57mA
I2=0.6÷47KΩ=0.013mA
IB=I1-I2=0.57-0.013=0.557mA
IC=(5-0.1)÷1KΩ=4.9mA
バイポーラ-NPNトランジスタによるエミッタフォロワー回路例
次に、バイポーラ NPNトランジスタによるエミッタフォロワー回路を紹介します。

図3 バイポーラ-NPNトランジスタによるエミッタフォロワー回路例
-
1.エミッタフォロワー回路を採用する目的は電流増幅です。
IC=IBxhFE
2.入力に0V/+5Vの信号を入れると出力信号レベルは、
0V/+4.4Vとなります。 +5V-0.6V=+4.4V VBE=0.6Vレベルダウン
PMST2369:15V、600mA
NPN-PNPトランジスタ・ドライバー回路例
BC817DPNは、45V/500mA、hFEmin160のNPNとPNPを1パッケージに収めたタイプのトランジスタです。こちらを使って、NPN側から制御してPNP側の24Vをドライブする回路を紹介します。

図4 Double BC817DPN NPN-PNPトランジスタ・ドライバー回路例
NPN-NPNダーリントン・ドライバー回路例
小さいベース電流で非常に大きなコレクタ電流を制御可能な、ダーリントン接続を用いたドライバ回路を紹介します。

図5 NPN-NPNダーリントン・ドライバー回路例
BST50は、NPN-NPNのダーリントン接続を1パッケージに収めたトランジスタで、こちらを使った回路が図5になります。
特長は、ダーリントン回路による電圧Dropは大きいですが、ダーリントントランジスタを1個の部品で構成でき、コスト面で有利である点です。
- BST50:45V、1A、VCE(sat)max1.3V、hFEtyp3500 @IC=0.3A
Vout=+24V-VCE(sat)-Vbia=+24V-1.3V-0.21V=+22.68V 1.32V Drop
Vbias=2.4KxIB=2.4Kx0.3A÷3500=0.21V
PDTA143U:50V、100mA
PNP-NPNダーリントン・ドライバー回路例
PNP-NPNダーリントン・ドライバーも紹介します。
こちらの特長は、ダーリントン回路による電圧Dropが低いという点です。

図6 PNP-NPNダーリントン・ドライバー回路例
- PNP:PBSS5140U -40V、-1A、VCE(sat)typ-50mV、hFEtyp450@IC100mA
NPN:PBSS4540Z 40V、5A、VBEtyp0.63V、hFEtyp450@IC2A
Vout=+24V-VCE(sat)-VBE==+24V-0.05V-0.63V=+23.32V 0.68VDrop
PDTC143ZU 50V、100mA
まとめ
今回はバイポーラトランジスタとしてNexperia製品を例として掲載しましたが、Nexperia社は様々なバイポーラトランジスタのラインナップをご用意しています。下記URLを参照いただけますと幸いです。
次回のアナログ回路豆知識は、「バイポーラトランジスタの応用回路例」についてお伝えする予定です。