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耐久性を必要とする5GタイミングにはMEMSクロックソースが必須

耐久性を必要とする5GタイミングにはMEMSクロックソースが必須

セルラーテクノロジーの設計に携わったことがある方なら、構造の複雑さがどのようなものかをすでにご存知だと思います。プロトコルと標準規格が、まるでたくさんの不安定な積み木のように重ねられている中で、それら全てをうまく機能するには、繊細なスペック、細かい設計、そして精工なタイミングを要します。

現在、5Gはすでに注目されていますが、より耐久性を強化し、前世代と比較しても、5Gは、より多くのアプリケーションに対応できるソリューションになると期待されています。つまり、期待に応えるためにはスペック、設計、タイミングを慎重に計画し、実用化させる必要があります。

本ブログでは、5Gにはより耐久性の高いタイミングが必要であること、そしてその耐久性はMEMS発振器で実現できることについて、お伝えしたいと思います。

目次

5Gには、より耐久性の高いタイミングが必要

5G技術は今までにないほど、高い要求をタイミングソリューションに課しています。

  • 周波数が高くなれば高くなるほど、より短い時間でより多くの処理を行う必要性。
  • 帯域幅はより厳格に使用されるため、チャンネルで使用される帯域は狭く、タイミングのずれを許容できる範囲が狭い。
  • 周波数が高くなると、今までのように広範囲に届かず、さらに方向を変える能力も低下。よって今までよりも狭域のみをカバーする、より多くの基地局アンテナが必須。現在の4Gアンテナ1台に対して、5G基地局は10台~20台が必要と予想される。
  • 無線機間の遅延バジェットは130ns。これは2つの無線機間のネットワークノードあたり10ns のバジェットとなります。ちなみに、GNSSのタイミング精度が99.7%の確率で15nsです。この差はチャンネル間の干渉を少なくし、帯域幅を有効に活用できることを意味する。この条件を満たすのはそれほど大変なことではないように見えるが、正確なタイミングを様々な環境下で維持することは容易ではない。

タイミングを正確に刻み続けることはタイミングソースに大きな負担を強います。ローカルタイミングではMEMSクロックの精度、安定性、信頼性が必要となります。

ネットワークのタイミングソース

5Gシステムでは3つのタイミングソースが存在します。

1つ目はネットワークそのもの。タイミングを受信するための IEEE 1588 規格、そしてタイミングを同期するための SyncE 周波数をイーサネットで使用します。しかし、ネットワークがダウンした場合、ネットワークからタイミングを得ることができなくなります。

2つ目のバックアップとしてGNSSがあり、1パルス/秒を得ることができます。高精度ではありませんが、便利です。ただ、機器のGNSS信号が弱い場所にある時はどうなるでしょうか?ネットワークが元に戻るまで時刻同期を保持する必要があり、そうしないと機器がダウンしてしまいます。

そこでホールドオーバークロックが重要な役割を担います。フライホールのようにアクティブに駆動せずとも、主要ネットワークが戻るまで一定の速度で回転し続けることができます。水晶発振器のような「アクティビティ・ディップ」や突然の周波数ジャンプが無い、非常に安定したクロックソースが必要とされています。SiTimeのOCXOやTCXOが最適です。

どの程度ホールドオーバークロックを使用すべきかについては、ネットワーク業者によって異なり、基準は特にありません。エッジデバイスの近くではホールドオーバークロックは2~4時間内で1 μs 以下にドリフトを抑える必要があります。逆にバックエンドに近いところでは、8時間内、12時間内、24時間内で1 μs 以下にドリフトを抑える必要があります。具体的な継続時間はネットワーク業者が選択できます。例えばインドでは、他のインフラに耐久性がないため、ネットワーク業者がより厳格な仕様を求める場合があります。

図1. ネットワーク・シンクロナイザーにより3つのタイミングソースのうちの
1つが選択され、切り替え時の位相ジャンプがない

それぞれのソースが完全に独立して成り立っているので、これらのソースを切り替えるスイッチは存在しません。単純に1つのソースから次のソースへ切り替えた場合、位相ジャンプが発生し、末端で重大な問題が発生する可能性があります。そこでネットワーク・シンクロナイザーは発信するクロック信号の位相が乱れないようにソースを切り替える「隠れた」スイッチの役割を担います。

タイミングにとっての試練とは?

5Gの状況を簡単に説明すると、すでに精度の高い4Gのタイミングをもっと高精度にしたもので、今まで置くことが出来なかったような厳しい環境に機器が置かれます。こういった状況はローカルクロックソースに対し沢山の課題を課します。

振動

まず振動問題です。道路横の電柱など、より多くの場所に無線機を設置すると、厳しい環境に置かれる機器が増えることに繋がります。その電柱の横を大型トラックが通りすぎ、周辺がガタガタと揺れる状況が生まれます。

タイミングソースはその様な振動に耐えられるものでなければいけません。水晶振動子は振動に弱く、その外部からの振動が続く限り仕様通りの能力を発揮しません。長い貨物列車が通り過ぎる間は数分間振動が続きますし、風の強い日はさらに振動は長く続くでしょう。それに対し、MEMS発振器は、外部からの振動によって機能が低下することはありません。

高温

5G機器は考え得るありとあらゆる環境に置かれることになります。機器によっては非常に高温な場所に設置し場合によっては、非常に低温環境下で作動することになります。例えるなら、1つの機器が暑い夏と寒い冬の極端な温度差に対応しなければいけないこともあるのです。ファンは故障しやすいため、設計者はファンを省く傾向にあるので、5G機器には冷却装置が内蔵されていません。

あらゆる温度環境下で正確なタイミングを保つのは非常に難しいことですが、ネットワークを維持し続けることは必要不可欠です。つまり、極端な温度条件下でもネットワークは繋がり続けなければいけません。高性能MEMS発振器であれば、125℃まで非常に高い安定性で作動し続けることが可能です。

急激な温度変化

MEMS発振器は炎天下や凍結した環境下での安定性に加え、急激な温度変化という、より過酷な状況下でも能力を発揮することが可能です。アメリカの南西部では、前線の衝突やジェット気流の移動により、高温と低温の気流が交差するため、周囲の気温が数分で20℃も変化することがあります。熱気や冷気の急激な温度変化にさらされるとクロックソースには大きな負担となります。

水晶は急激な温度変化に対応することが難しく、周波数が一気に数百ppb(parts per billion) 跳ね上がり、スペック範囲内の周波数に戻るまでに数分かかることもあります。反して、MEMSタイミングデバイスはこういった急激な温度変化に対しても問題なく安定性を保つことが可能です。

図2. 水晶TCXOは熱や風、急激な温度変化に敏感で周波数が大きく変動するのに対し、
MEMS TCXOはこの様な状況下でも極めて安定した状態で作動可能

5GタイミングにはMEMS発振器が必要

5Gの機器設計ではタイミングがこれまで以上に重要となります。より高精度で正確なクロックソースが無ければ5Gの役割を果たすことは不可能です。MEMS発振器はネットワーク事業者がタイミング機能によってネットワークがダウンしないことを保証し、5Gへの期待を現実にします。

SiTimeなどが提供するMEMS発振器は、5G機器がさらされる様々な環境下でも安定して動き続けられます。
水晶発振器とMEMS発振器を比較した内容は以下の通りです。

MEMS発振器は

  • 125℃までの温度定格
  • 水晶の10倍の耐振動性
  • マイクロ位相ジャンプがないため、通話が途切れない
  • 水晶の100倍の信頼性、故障対応のサービスは最小限にできます。
    (例:SiTimeは10億個以上出荷し、フィールド故障はゼロ)

さらにMEMS発振器はこの機能全てを1/5の消費電力で実現することができ、利用者にとって不都合な点はありません。すでにMEMSは数年後に使用される様々な5G機器のクロックソースとして利用され始めています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
今回のブログを通して、5Gのネットワークにおけるタイミングの重要性と5GタイミングにはMEMSクロックソースが必須であることをご理解いただけたでしょうか。

SiTime社が提供するMEMS発振器は、低消費電力で5G機器のクロックソースとして様々な場所で活躍しています。

 

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最後までご覧頂きありがとうございました。

 

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