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TCXOの周波数安定性および周波数精度バジェット

TCXOの周波数安定性および周波数精度バジェット

はじめに

温度補償発振器(TCXO)は、通常、5ppm以下の周波数安定性を必要とするシステムの周波数基準に使用されます。一般に、これらのシステムでは、動作温度、供給電圧、出力負荷およびシステム全体の動作期間中の経年劣化といった全ての変動要因によるTCXOの周波数変動を考慮したうえで、周波数精度を所定のタイミングバジェット内に保つ必要があります。環境的要因による影響および基準発振器の回路条件による影響を定量化するために、一連の周波数安定性パラメータは、業界によって定義されています。

本ブログでは、SiTimeのTCXOデータシートにおける周波数安定性の仕様、および周波数精度範囲の計算方法について説明します。

温度安定性および周波数精度

SiTimeのTCXOデータシートには、次の周波数安定性の仕様が記載されています。

初期許容差(F_init)

常温(例:25±3℃)における公称周波数からの周波数偏差を示します。プリント基板(PCB)に取り付けられているデバイスによって、通常の電源電圧および出力負荷条件下で測定します。初期許容差の主要構成要素は、SiTimeの工場における温度キャリブレーション後の残余周波数誤差およびPCBハンダ付けによる周波数シフトです。
システムタイミングバジェットへの初期許容差の影響は、電圧制御TCXO(VCTCXO)を用いてPCBのリフローアセンブリ工程後の周波数キャリブレーションを行なう事で最小化できます。

温度安定性(F_stab)

周囲温度変化により生じた周波数変動の特性を示したもので、全動作温度範囲にわたるピークtoピーク周波数偏差の半分と定められています。
供給電圧安定性(F_vdd)とは、2.5V~3.3V VDD±10%以内または1.8V VDD±5%以内の電源電圧変動によって生じた周波数シフトを示します。

出力負荷安定性(F_load)

LVCMOS出力発振器の最大15pFまでの出力ピンの負荷容量差によって生じた周波数シフトのことです。

総合周波数精度(F_total)

上記パラメータを合計して算出されます。
例を挙げると、温度安定性が±2.5ppmのSi5000 VCTCXOの総合周波数精度は、

F_total=F_init+F_stab+F_vdd+F_load=1+2.5+0.05+0.1=3.65ppm

です。

システムキャリブレーションによって初期許容差を低減するために VCTCXOオプションを用いることで、総合周波数精度がさらに高くなります。

F_total=F_stab+F_vdd+F_load=2.5+0.05+0.1=2.65ppm

通常、温度安定性はTXCOを使用したアプリケーションにおける周波数誤差の支配的要因です。
常温での周波数オフセットとは異なり、単純なキャリブレーション方式で温度ドリフトを解消することはできません。

経年劣化および周波数精度

一定の動作条件下であっても、TCXOの周波数はデバイス内の内部変化によって経時的にシフトします。周波数の経時的シフトがあるためシステムバジェットに追加パラメータを考慮する必要があります。最も一般的に使用されるパラメータは、初年の経年劣化および10年間の経年劣化のパラメータです。

初年の経年劣化とは、一定の電源電圧および動作温度(通常25℃)における1年間の継続動作後の初期周波数の周波数シフト範囲のことです。

10年間の経年劣化とは、一定の動作条件における10年間の継続動作後の初期周波数に対する周波数シフト範囲のことです。10年間の経年劣化の仕様は、9~18ヶ月またはそれ以上の期間にわたる統計的に有意なサンプル一式を用いて行った周波数測定から推定された数値です。

初年の経年劣化または10年間の経年劣化を含む総合周波数精度は次式で求めます。

F_total=F_init+F_stab+F_vdd+F_load+F_aging

例えば、Sit5000 2.5 ppm VCTCXOの初年の経年化は1.5ppmです。
したがって、総合周波数精度は

F_total=F_init+F_stab+F_vdd+F_load+F_aging=1+2.5+0.05+0.1+1.5=5.15ppm

として計算できます。

同じVCTCXOの10年間の経年劣化は3.5ppmで、10年間の総合周波数精度は±7.15ppmとなります。

TCXOデバイスと同じ電圧調整オプションおよびシステムキャリブレーションにより、周波数精度バジェット範囲を狭めることができます。
例えば、PCBアセンブリ後の初期許容差を除去し、製品の耐用年数を向上させるように定期的に経年劣化関連の周波数シフトを修正すれば、精度は向上します。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回のブログで紹介したTCXOについては、SiTime社よりラインナップされています。併せてご確認ください。

 

SiTime社についてはこちら

 

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