環境にやさしい小型機器への一歩:エナジーハーベストシステムの構築に役立つ電源ICとは?

低コストで適度な寿命を持つことから、依然としてIoTセンサ、リモコン、玩具などの小型機器には乾電池が広く使用されています。しかし乾電池の寿命は数年で、世界中で年間約150億個の一次乾電池が廃棄されているのが現状です。
SDGsの観点からも、光、熱、振動、電波などの環境エネルギーを電気エネルギーに変換するエナジーハーベスト技術*が注目を集めています。
~SDGs 目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに~
全ての人々に手頃で信頼性が高く、持続可能で近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

- *エナジーハーベスト技術:
- 光や振動、熱など周りの環境に存在する希薄なエネルギーを「収穫」(ハーベスト)して電力に変換する技術。環境発電技術とも呼ばれる。
本ブログでは、小型機器向けに太陽電池を用いたエナジーハーベストについて紹介します。
目次
PVセルとは
PVセルは一般的に太陽電池と呼ばれる、光(実際は太陽光だけではなく室内灯などの光も含む)を電力信号に変換する素子です。

- 1セルあたり0.7V程度
- 発電の電流は面積に比例
- 出力電圧は、セルをスタック(積み重ねる)することで必要な電圧を確保
しかし次のシェーディング効果があることから、使用には注意が必要です。
PVセルのシェーディング効果

PVセルは電圧を確保するため数個スタックさせて使用することが多いですが、1枚のセルに陰りや不整合が生じると、全体の電流が低下し、出力が低下してしまう現象(シェーディング効果)が発生します。
またPVセルの一部が影になり、1つのセルの発電効率が50%ダウンした場合、他のセルが100%発電できても全体の発電量が50%になってしまいます。
このシェーディング効果の影響を防ぐためには、できるだけPVセルのサイズを大きくした方がいいですが、電圧は基本的に1セル0.7Vなので、発電量を増やすためにはPVセルを増やす必要があり、システム自体が大きくなってしまうという課題があります。エナジーハーベスト用PMIC(Power Management IC)
上述した課題を解決するために、Nexperia社から提供されているエナジーハーベスティング用のPMICを活用するという方法があります。
小型機器用に太陽電池(PVセル)を簡単に活用するためのソリューションとして、Nexperia社からエナジーハーベスティング用のPMIC NEH2000BYがリリースされています。
エナジーハーベスティングでは非常に小さなエネルギーを電力に変換するため、通常バッテリー(二次電池)への充電に使用されることが多いです。NEH2000BYは、PVセルとバッテリーの間に配置し、
- PVセルの出力電圧を昇圧
- PVセルへの光の当たり方によって効率的にエネルギーを獲得
する機能によって、PVセルのシェーディング効果を考慮してもシステムの小型化に貢献します。
NEH2000BYの特長
1. 小型でシンプルな昇圧PMIC
デバイスサイズ:3x3mm、フットプリント:最小12mmx2mmと小型かつチャージポンプのトポロジーなのでコイル不要でシンプルな構成で昇圧します。
この昇圧機能をPVセル後段に入れることにより、1セル当たりの電圧を0.7Vから上昇させることができるため、通常のPVセルに比べ同量の発電を行う場合、PVのセル数を少なくできます。
- ※
- コイルを使用する場合、周波数、電流、インダクタンス、配線抵抗すべて加味して選定し、電流飽和などのトラブルが起きないように十分評価して選定しなければなりません。
入力のコンディションが大きく変化するエナジーハーベストでは特に気を付けないといけないので、設計上の大きな負担となります。
2. 高速MPPT機能
PVセルへの光の当たり方によって最大エネルギーを獲得する調整(MPPT機能)をスタンドアロンで0.7秒以内に実施、効率的により多くの電力を変換します。
- ※
- シェーディング効果や室内など悪条件でも充電電流を確保できます。
おわりに
Nexperia社のエナジーハーベスト用PMIC(Power Management IC)は、上記のような特長を持ち、太陽電池を使ったエナジーハーベストシステムの発電効率を高め、小型なシステム構築に貢献します。
詳細は以下メーカーHPを参照いただけますと幸いです。
Energy harvesting power management ICs | Nexperia
Nexperia、環境に優しいエネルギー自給型低消費電力デバイスを 実現するエナジーハーベスト機能付きPMICを発表 | Nexperia
最後までご覧いただきありがとうございました。