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メモリ基本講座「GDDRメモリとは何ぞや?」

メモリ基本講座「GDDRメモリとは何ぞや?」

GDDR7が登場し、AIや次世代ゲームの現場でメモリ性能がかつてなく注目されています。本記事では、GDDRの基本概念からGDDR1〜GDDR7までの進化、GDDR6との仕様比較、AI処理での活用、PAM3採用の理由まで、エンジニア・技術者向けにまとめて解説します。

この記事でわかること

  • GDDRメモリの基本概念と、DDR・LPDDRとの違い
  • GDDR1からGDDR7までの世代別進化と仕様の変遷
  • GDDR6とGDDR7の仕様・アーキテクチャ・クロック設計の違い
  • AI処理(学習・推論)におけるGDDRの役割とHBMとの使い分け
  • PAM2(NRZ)・PAM3・PAM4の信号方式の違いとGDDR7がPAM3を採用した理由
  • GDDR7対応GPU(NVIDIA GeForce RTX 50シリーズ)の仕様一覧

1. GDDRメモリとは何か?

GDDR(Graphics Double Data Rate)メモリは、グラフィックスカードやゲーム機などの高性能グラフィックス処理向けに最適化された高速DRAM規格で、JEDECにより標準化されています。

従来のDDRメモリよりも圧倒的に高い帯域幅を実現し、GPUとの超高速データ転送を可能にします。
GPUには専用のGDDRメモリが搭載され、メモリコントローラが広帯域なデータフローの最適化と効率的なアクセス管理を行います。

GDDRメモリはDDRメモリをグラフィックス用途に改良した規格として始まりました。初期はDDRメモリの派生品としての性格が強かったものの、世代を追うごとに進化を遂げ、現在ではグラフィックス・並列計算に特化した、DDRとは異なる独自のメモリ技術体系を確立しています。

主な特徴としては以下が挙げられます。(表1)

表1.GDDRメモリの主な特徴
超高帯域幅 1ピンあたりの転送レートが極めて高く、膨大なグラフィックスや演算データの高速転送が
可能
優れたアクセス並列性 GPUと複数のチップを並列接続し、さらに近年の世代(GDDR6/7)ではチップ内部を複数の独立したチャンネルに分割することで、同時アクセスの効率化と総帯域の拡大を両立
帯域幅優先設計 大量のデータを一度に処理するGPUのアーキテクチャに最適化された高スループット重視の
特性

なお、同様にDDRメモリから派生した規格としてLPDDRメモリがありますが、こちらはスマートフォンや薄型PC向けに省電力・小型化にフォーカスしたメモリであり、GDDRとは設計思想が異なります。
(LPDDRメモリについてはこちらのブログで説明しています。「メモリ基本講座「LPDDR5/5Xとは何ぞや?~概要編~」」)

表2に各メモリ規格の主な特性の比較をまとめました。

表2.メモリ種別比較表
項目 DDR
Double Data Rate SDRAM
LPDDR
Low Power DDR
GDDR
Graphics DDR
設計思想 汎用性・大容量 低消費電力
省スペース
超高帯域幅・
高スループット
主な用途 PCメインメモリ スマートフォン
タブレット
薄型PC
GPU(グラフィックカード)
AI/HPC処理
転送速度 最大7.2 Gbps
(DDR5)
最大10.7 Gbps
(LPDDR5X)
最大36〜48 Gbps
(GDDR7)
レイテンシ 低め
(応答性重視)
低め
(応答性重視)
比較的高め
(帯域幅・スループット優先)
電圧 1.1V (DDR5) 1.05V (LPDDR5) 1.2V (GDDR7)

2. GDDRの変遷(GDDR1~GDDR7)

以下、表3に世代毎の変遷を示します。GDDRメモリは通常のDDRメモリやLPDDRメモリ同様に世代が進むことで低電圧化と高帯域化が進んでいることが分かります。なお、実際のデータレートは駆動電圧や各メモリベンダーのチップ仕様によって異なるため、本表の値は主要なターゲットレートとしての参考値に留めてください。

GDDR5以降、帯域幅、転送速度、電力効率を大幅に向上させてきました。特に近年の世代(GDDR6XやGDDR7)では、従来の信号方式(NRZ)の物理的な限界を突破するため、1周期あたりに複数のビットを転送できる多値信号方式(PAM4やPAM3)が導入されました。この技術進化の時期は、ディープラーニングや大規模AIモデルの普及期とちょうど重なっており、生成AI向けの高性能GPUや、次世代ハイエンドゲーム機の性能向上を支える不可欠な技術となっています。

表3.GDDRメモリの世代別仕様比較
世代 登場年 JEDEC 電圧 data rate 信号
方式
特徴
GDDR1 2000 標準化 2.5V ~3.2Gbps NRZ
(PAM2)
初のGDDR。
DDRをGPU向けに最適化
GDDR2 2002 標準化 1.8V ~3.5Gbps NRZ
(PAM2)
高クロック化、電力効率改善
GDDR3 2003 標準化 1.8V ~4.0Gbps NRZ
(PAM2)
主流化
PS3などに採用
GDDR4 2005 標準化 1.5V ~4.5Gbps NRZ
(PAM2)
データレート向上
(採用は限定的)
GDDR5 2007 JESD212 1.5V ~8.0Gbps NRZ
(PAM2)
帯域幅・電力効率向上
(約10年間の標準)
GDDR5X 2016 JESD232 1.35V ~14Gbps NRZ
(PAM2)
GDDR5改良版
QDRモード採用
GDDR6 2018 JESD250 1.35V ~16Gbps NRZ
(PAM2)
独立デュアルチャネル構造
4KゲームやVR対応
GDDR6X 2020 独自仕様 1.35V ~21Gbps PAM4 Micron独自開発で、NVIDIA GeForce RTX 30/40シリーズに搭載
GDDR7 2024 JESD239 1.2V 28~48Gbps PAM3 PAM3採用で省電力・超高速化
4チャネル構成
AI・次世代ゲーム

データレートと電圧の進化

図1.データレートと電圧の進化

3. GDDR6 vs GDDR7:仕様・アーキテクチャ・クロック設計の比較

3.1 GDDR6 vs GDDR7 仕様比較

GDDR6とGDDR7の仕様比較を表4に示します。信号方式の変更、内部チャンネル数の倍増、電力効率の向上が主な進化点となります。
Micron社の公開データによると、GDDR7はGDDR6と比較して、帯域幅が最大60%向上、動作電圧の低減により電力効率が50%以上向上しています。(出典:Micron GDDR7 Memory Product Brief

表4.仕様比較
項目 GDDR6 GDDR7
JEDEC規格 JESD250 JESD239
動作電圧 (VDD&VDDQ) 1.35V 1.2V
VPP電圧 1.8V 1.8V
data rate 最大16~24Gbps 最大28~36Gbps
(48Gbpsが目標)
信号方式 NRZ (PAM2) PAM3
チャネル数/チップ 2チャネル (x16/x8) 4チャネル (x8)
prefetch 16n 32n
burst length 16 16
Bank数 / Bank Group 16B/4BG 16B/4BG
bank group 4 4
クロック方式 WCK (DDR/QDRモード) WCK (DDRモード)
エラー訂正 CRC オンダイECC
データポイズン検出
CAパリティ強化
デバイスあたりの帯域幅 64~96GB/s 128~192GB/s

3.2 アーキテクチャ比較(チャネル構成)

図2に示すように、GDDR6は1チップあたり2ch構造(各x16またはx8)ですが、GDDR7は4ch構造(各x8)へと細分化されました。チャンネルを細かく独立させることで、より小さなデータ単位(粒度)で効率よくメモリへ同時アクセスできるようになり、GPUの並列処理における実行レイテンシの削減とバス効率の向上に大きく貢献しています。

アーキテクチャ比較

図2.アーキテクチャ比較

3.3 クロック設計の違い

GDDRメモリの高速化を支えるクロックシステムを表5と6にまとめます。超高速なデータ転送を維持しながら実現するため、役割の異なるクロックが連携して動いています。

GDDR6では、コマンドやアドレスを制御する「CK」と、データを制御する「WCK」がそれぞれ独立して動きつつも、メモリコントローラ側で両者の位相(タイミング)を厳格に同期させる(CK-WCKアライメント)必要がありました。データレートが高速化するにつれ、この2つの異なるクロックの同期を保つ設計が物理的な限界に達していました。

そこでGDDR7は「チャネル独立クロック・アーキテクチャ」へと舵を切りました。高速クロックは役割ごとに完全分離され、コマンド・アドレスは内部クロック(CK4_int)、書き込みデータは「WCK」、そして読み出しデータは新設された「RCK」がそれぞれ個別に担当します。これにより、チャネル内でクロックが自己完結し、従来の厳格なアライメント制御から解放され、さらなる高クロック化が可能となりました。

表5-1.GDDR6 クロック
クロック名 正式名称・意味 主な役割
CK Command Clock コマンド・アドレス(CA)用の基準クロック
GDDR6ではCAバスのラッチタイミングの基準として使用
WCK Write Clock データ同期用高速クロック
書き込み時だけでなく読み出し時のホスト側でのデータ同期基準でもある
表5-2.GDDR7 クロック
クロック名 正式名称・意味 主な役割
CK Command Clock コマンド・アドレス(CA)用の基準クロック
WCK Write Clock データ書込み用高速クロック
RCK Read Clock GDDR7で新設されたデータ読み出し専用高速クロック
CK4(int) Internal Clock クロック(CK)をベースに生成される内部基準クロック(WCK周波数の1/4)
ACタイミングやレイテンシの基準
表6-1.GDDR6 クロックとインターフェース信号の周波数関係の例
Signal DDR WCK QDR WCK UNIT
CK_t, CK_c 1.5 1.5 GHz
CA 3.0 3.0 Gbps/pin
WCK_t, WCK_c 6.0 3.0 GHz
DQ, DBI_n 12.0 12.0 Gbps/pin
EDC 6.0 / 12.0 6.0 / 12.0 Gbps/pin
表6-2.GDDR7 クロックとインターフェース信号の周波数関係の例
Signal PAM3 mode NRZ mode UNIT
CK4 (int) 1.75 0.5 GHz
WCK_t, WCK_c
RCK_t, RCK_c
7 2 GHz
CA[4:0] 7 2 Gbps/pin
DQ[7:0], DQE - 4 Gbps/pin
  14 - Gbaud/pin※
DQ[9:8] 14 - Gbaud/pin※

※ PAM3モードにおける14 GBaudは、8つのDQに対するデータレート28 Gbps、
あるいはチャネルあたりのメモリ帯域幅28 GB/sに相当

4. GDDRとAI推論・LLMの関係:学習と推論でのメモリ使い分け

「1.GDDRメモリとは何か?」でお伝えしたように、GDDRメモリは、グラフィックス処理を高速化するために開発されたメモリ規格ですが、近年ではAI・機械学習・深層学習(Deep Learning)の分野においても非常に重要な役割を担うようになってきました。

AIの学習や推論処理では、莫大な行列計算やテンソル計算を高速かつ並列に処理する必要があります。GPUはその圧倒的な並列処理能力を担い、GDDRはそのGPUにデータを途切れなく供給する超高速なデータロードの要として機能します。
AIの処理には大きく2つのフェーズ(学習と推論)があり、求められるコストや環境に応じてメモリが使い分けられます。

GDDRとHBMはどう使い分けるべきか?

AIでの2つの処理、学習フェーズと推論フェーズでは表7のようにメモリの使い分けを行います。

表7.メモリの使い分け

AI学習
フェーズ
膨大なデータからパターンや特徴を抽出して巨大なAIモデルを構築するトレーニングフェーズです。ここでは桁違いのデータ転送速度(帯域幅)が必須となるため、主にデータセンターではHBM(3D積層技術を用いた高帯域幅メモリ)という極めて高性能・高価なメモリが使われます。
AI推論
フェーズ
学習済のAIモデルを動かし、実際にテキスト生成や画像認識、予測などの答えを出力する実用フェーズです。この領域では、日常のビジネスや生活に普及させるためのコストと性能、消費電力のバランスが強く求められます。そのため、我々の身近にあるPC、スマートフォン、自動運転車、家電などで動くエッジAI(ローカルAI)の処理において、コストパフォーマンスに優れたGDDRが大きなアドバンテージを持ち、広く活躍しています。

 

表8.AI処理

フェーズ 内容 メモリ要求 推奨
メモリ
AI学習
(Training)
膨大なデータ収集
モデル構築
超高帯域・超大容量・高密度 HBM
AI推論
(Inference)
構築済みモデルの実行
エッジ・ローカル環境でのリアルタイム処理
高帯域・優れたコスト効率・ボード実装性 GDDR
LPDDR

次世代のスタンダードであるGDDR7メモリを利用する場合のスペックとAI処理におけるメリットの参考例は以下の通りです。

  • 圧倒的なデータ転送速度(帯域幅)
    • GDDR7 (256bit@36Gbps):帯域幅 1,152GB/s
    • GDDR7 (384bit@36Gbps):帯域幅 1,728GB/s
  • AI処理における具体的メリット
    • ローカルLLM(大規模言語モデル)の高速化:LLMのテキスト生成処理は、メモリの帯域幅が全体の速度ボトルネックになります。GDDR7の帯域により手元のPCで動かすAIの応答性が飛躍的に向上します。
    • 次世代GPUとの相乗効果:NVIDIA GeForce RTX 50シリーズをはじめとする最新アーキテクチャのGPUでは、強化されたAIコアと、この超高速なGDDR7が組み合わさることで、画像生成AIや音声認識、リアルタイムAI推論が大幅に加速します。

5. 信号方式:PAM3とPAM4の違い

パルス振幅変調(PAM:Pulse Amplitude Modulation)は、信号波形の振幅(電圧の高さ)の変化によって情報を表現する変調方式です。1波形(1シンボル)あたりの電圧レベル数を増やすことで、1回に伝送できるビット数を増やせます。各信号方式の違いを表9にまとめます。

表9. 信号方式の違い
  PAM2(NRZ) PAM3 PAM4
振幅level数 2 level(0,1) 3 level(0,1,2) 4 level(0,1,2,3)
伝送bit数/symbol 1bit(log22) 1.5bit※ 2bit(log24)
帯域幅効率
ノイズ耐性
実装世代 GDDR1~GDDR6 GDDR7 GDDR6X

※ PAM3の理論値はlog23≒1.58bit/symbolですが、GDDR7では2symbolで3bitを転送する効率的なエンコード方式を
採用するため、実効転送効率は1.5bit/symbolとなります。

PAM種類による信号イメージ

図3.PAM種類による信号イメージ

高速通信における信号の多値化はデータ転送効率を向上させる一方、信号の電圧レベル間隔が狭くなるためノイズ耐性が低下します。そのためエラー訂正などの対策が必要となります。

なぜGDDR7はPAM4ではなくPAM3を採用したのか?

GDDR7でPAM4ではなくPAM3が採用されています。その理由としては以下が挙げられます。

  • PAM4の課題(アイ開口の減少):4レベルに分割すると電圧の差が非常に小さくなり、基板上のノイズでビットエラーが発生しやすく、高度で高消費電力なノイズ対策回路が必須となります。
  • PAM3の優位性(バランスの良さ):3レベルに抑えることで、信号の判別に必要な電圧マージン(アイ開口)を確保しつつ、従来のNRZに比べ50%の高速化(高効率)を達成できます。
  • 優れた電力制御(動的切り替え機能):GDDR7では、高負荷時は高速なPAM3、アイドル時や省電力時は従来のNRZへと、信号方式を動的に切り替える工夫が施されています。
  • 採用実績による信頼性:既に高速インターフェース規格のUSB4 V2.0(80Gbps)などで先行採用されており、PAM3の技術的な信頼性の実績があります。

PAM3は、高効率な「PAM4」と、実装が容易で堅牢な「NRZ(PAM2)」のちょうど中間に位置する絶妙なバランスの信号方式です。データ転送速度を大幅に引き上げつつ、GDDRの課題である消費電力とエラー率を低く抑えるための、GDDR7における最大のイノベーションと言えます。

6. GDDR7対応GPU一覧(2026年6月時点での弊社調べ)

表10にあるように、NVIDIA GeForce RTX 50シリーズ(Blackwellアーキテクチャ)がGDDR7に対応するGPUとなります。

表10.GDDR7対応GPU
モデル名 CUDAコア 標準メモリ構成 メモリ幅 メモリ帯域幅
GeForce RTX 5090 21,760 32GB GDDR7 512bit 1,792GB/s
GeForce RTX 5080 10,752 16GB GDDR7 256bit 960GB/s
GeForce RTX 5070 Ti 8,960 16GB GDDR7 256bit 896GB/s
GeForce RTX 5070 6,144 12GB GDDR7 192bit 672GB/s
GeForce RTX 5060 Ti 4,608 16GB/8GB GDDR7 128bit 448GB/s
GeForce RTX 5060 3,840 8GB GDDR7 128bit 448GB/s

7. まとめ

GDDRメモリは、もはやグラフィックス専用の枠を超え、ローカルAIやエッジコンピューティング時代を支える重要なインフラ技術のひとつとなっています。
HBMに比べて低コストでありながら、圧倒的な高帯域幅を実現するGDDRの進化は、AIワークロード(データ処理)を私たちの身近な環境で効率化・普及させるうえでも大きな意味を持っています。

今後、GDDR7の普及やそれに続く次世代規格の登場により、更なる性能向上と省電力化が見込まれており、GPUおよびAI技術の進化において、GDDRメモリの果たす役割はますます不可欠なものになっていくでしょう。

PALTEKはMicron Technology社の販売代理店です。
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